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2020年6月13日土曜日

マックにて



 マックでは再び座ることが許されるようになっている。
緊急事態宣言の後、夜はテイクアウトすらやってなかった時期もあった。夜のテイクアウトが解禁されて、誰もいない店先で立ってコーヒーを飲んだ夜もあった。
座れるようになって、やれやれだ。
自宅以外のたった一つの私の居場所だ。
今のところ密の心配はなく、店内でエア平泳ぎもバタフライも自由に泳ぎ回ることができる。


 静まり返った店内では、ずっとブログに綴ろうと思っていたある女のことが、信じられないような遠い昔の事になってしまった。
それは昨年の師走の夜だった。
端に一人の女が座っていたのだけれど、携帯電話で大声で話をしていた。私が、いつものテーブルにホットコーヒーを置いて、椅子を引こうとした時、女の口は、
「300万円も残高がある銀行カードを落としちゃってさ。」と言た。
えっと、驚いたのは私だけでなく、その女と隣り合わせるように座っていた部活帰りの男子高校生5人もそうだったに違いない。
女の声は、吹き抜けの天井にどこまでも響く大声だった。
女の歳は、よくありがちな年齢不詳といった感じだけれど、30代半ばではないだろうか。ふわっとした髪はショートボブだった。
話はどんどんと続いて、その銀行カードは爺ちゃんに預かってもらっていたもので、爺ちゃんがどこかに落としてしまったというのだ。
それで朝から銀行に電話をしたりのてんわやんやだったと。
けれど、それは定期預金のカードだ。と後になって言った。
私は肩を撫で下ろした。
そして、朝7時からマックでずっと仕事をしているとも言った。
なるほど女は、ジャージ姿で、ひざ掛けをかけて座っている。
「私の仕事は、何処ででもできるからさぁ〜。」
今こそリモートワークがコロナで急速に広がったけれど、昨年の暮には、女の何処ででも仕事ができると言うその言葉が羨ましく聞こえた。
そして、東京の家賃は高いから、年が明けたらある九州の町で暮らすとも言った。その町へ何度か下見にも行っていると、町や人々の様子などを語った。
話が次々と展開する中で、電話の相手がこの話が周囲に聞こえているのではないのかと問うているようだった。
女は、「大丈夫、大丈夫、高校生がワイワイやっているからさぁ。」
女の側には、部活帰りの5人の男子高校生だけでなく私もいたわけだ。
けれど、私の存在はその女にスルーされたのだった。
「一人おばさんがダンボの耳で聞いているけどさ」、と大きな声で言われても、それはそれでカチンときたに違いないけれど、 スルーされたのも物足りなく感じた。
その時、高校生達が座っていたテーブルは、今は密を避けるため、座ることを禁ずるステッカーが貼りつけてある。
女は、今のところ預金を取り崩さないで何とか暮らして行ける事、飲みにも月に2回は行けると言った。
そして女が、「飲みに行くのはファミレスだけど、もう少し安い店なら月に3、4回は外で飲めるよ。」と言った時、
高校生たちが一斉に、「寂しいー」と言った。
男子高校生達は、女が言うワイワイやっていると言うのは全くの嘘っぱちで、スマホをいじりながらシーンとしていた。
シーンと黙って、女の話に聞き耳を立てていたのだ。
女は、ついに収入について電話の相手から尋ねられたのだろう。
「前の仕事は、台本1本4万だったけど、今度の仕事は売上
見合いにしたから結構入ると思うんだ。」


台本と言っても、舞台もあれば、テレビやラジオ番組からアニメ、ゲームだってある。
女は、何の台本を書いているのだろう。
そして年が明けて東京を離れて九州の彼の地で今も台本を書いているのだろうか。
そもそもあの夜のマックでの携帯電話が話し相手もなくエアだったと言うこともある。
となると単なるホラ吹き女だけれど、コロナのご時世となっては、客人はマスクを口に当てて座り、ベラベラと大きな声でつばきを飛ばしながら話をする人もいなくなった。

2020年6月12日金曜日

梅雨入り



ちょっとばかり外の空気を吸いに出ようかと思ったけれど、
夜になって完全遮光布をめくり上げた排気口の隙間から、
辺り一面を猛烈に叩きつける雨の音が聞こえて来た。
予報通り昨日、東京も梅雨に入った。
関東では梅雨に入れば、申し合わせたように夏至が続く。
一年中で一番日が長い季節を迎えているのだ。
ドラキュラである私は、毎年訪れるこの季節を嘆き疲れた。
0時を過ぎれば、2時の外出が限界だ。
3時を回れば、もはや紫外線が降りてくる。
激しい雨音に、悔し紛れに飴をしゃぶった。


今日の東京の最高気温は30度、最低気温は23度、晴れのち雨の予報です。
通勤電車は、また混むようですがコロナと暑さにくれぐれもお気をつけ下さい。
電車で通勤しない方も、暑いので水分補給をお忘れなくどうぞ。

2020年6月10日水曜日

小竹さんは何処へ2

置地廣場

せなばならぬことも置いて
お風呂にも入らずに
昨夜は、ずっとうつらうつらしていた。


まさかコロナにかかってしまったのではないだろうな、小竹さん。
誰もがコロナにかかるリスクがあるのだから可能性はゼロではない。
いやいや少なくとも若干28歳の難病たかりの私より、おばあさんの小竹さんの方がずっとアクティブだから少なくとも私よりはコロナにかかるリスクは高いのではなかろうか。
これまで小竹さんから聞いて来た話をつなぎ合わせると、小竹さんの日々の行動はこうだ。
ほぼ毎日山手線に乗って、家族が入居した施設へ行く。
晴れの日には、車椅子を押して目黒川辺りを歩く。
そよ風を受ける家族は目を細めて、 気持ち良さそうにすると小竹さんは言った。
その後、再び山手線に乗って日本橋へ行く。その時、有楽町からバスで日本橋 へ向かうと交通費が節約できるのだと言っていた。
2週間に一度は、渋谷に行って、109の先にある美容室で髪を染めている。
夜になって戻って来て、スーパーマーケットへ行く。


4月に入ってからは、山手線の利用客の数もぐっと減ったであろうけれど、小竹さんを見かけなくなった2月、3月はまだ山手線は混んでいただろうと思う。
それとも生活のパターンを変えたのだろうか。
3月にはおそらく入居者をコロナから守るため施設が家族の面会も禁止したであろうから、施設で半日過ごすようなことがなくなったはずだ。
そして日本橋界隈の百貨店も営業を自粛していたから、日本橋巡りもできなくなって、昼間のうちにスーパーマーケットに行っているのだろうか。
けれど、私には夜のスーパーマーケットの惣菜売り場で値引きの品を獲物を狙うがごとく狙い続けていた小竹さんが、おいそれと昼間の正価の値段で買うような真似はしないだろうと思うのだ。
小竹さんは、自炊は全くしないようだった。
値引きされたチコリーをよく買っていたから、野菜を洗って食べるぐらいはしているようだけれど、卵焼き一つ作らないふうだった。
そして小竹さんはかなりの倹約家であった。倹約家と言うより、そうしなければ暮らして行けないのが、多くのお年寄りの実情なのだろう。私はその姿になんとなく将来を思う気持ちが暗くなって、少し距離を置いてしまったのかもしれなかった。
夜、二人で庄やで食事をした時、美味しかったと言った小竹さんに、私と店長とで、「小竹さんはドラキュラではないのだから、ランチに来ればいいではないか」と促した。
ところがランチの値段を聞いた小竹さんは、うんともすんとも言わなかった。
更に、小竹さんから聞いた話を矧ぎ合わせると、朝は300円でお釣りがくるモーニング、それはトーストとゆで卵とコーヒーぐらいのもので、ランチは、夜にはパブになるお店でパンとスープで500円、夕食は、スーパーマーケットか駅ビルの惣菜売り場の値引きのお弁当かお惣菜とご飯が400円程度だ。
1日の食費を1200円以内で抑えていることに私は気がついた。
調子の悪い日は、外出せずに、ヤマザキのランチパックの小倉&マーガリンをトーストするのが朝食だとも言っていた。
値引きされた小倉&マーガリンのランチパックが、小竹さんのスーパーマーケットのカゴの中には度々入っていた。
ランチパックの価格を改めて調べると135円だから値引きされて98円とかになるのかもしれない。



やはり、夜のスーパーマーケットに小竹さんがいないと言うのは、何かあったのではなかろうか。

2020年6月9日火曜日

お詫びの一枚



密
通勤電車内で密は避けようもなく、
暑さで体力をも削がれましょうが、
今週もお互いなんとか生きぬきましょう。
具合が悪く、今夜もこの一枚でごめんなさい。


2020年6月7日日曜日

小竹さんは何処へ

置地廣場

 ずっと気になっていることがある。
小竹さんをパタリと見かけなくなったのだ。
小竹さんは、私が勝手に付けた名前であって、名前も知らなければ、70代なのか80代なのか年齢もわからない。
ただ言えることは小さなおばあさんだと言うことだ。
おばあさん、それはとてもわかり易い言葉だけれど、私は将来自分がそう言うくくりで言われるのは嫌だなと思っている。


小竹さんは、洒落て言うならボブカットで、昔ならいわゆるおかっぱ頭の黒髪だ。小さいから座敷わらしのようなのだ。
若い時分に、小菊のようであった時がもしかするとあったかもしれないけれど、今はおばあさんだ。
ずっと以前、職場の先輩が
「美人もブスもおばさんになってしまえば皆んなおんなじになるのよ。」と言ったことがある。
それは、おばあさんに置き換えてもそのとおりなのだと思う。


小竹さんのことを最後に綴ったのは昨年の10月だけれど、
その後もちょくちょく夜のスーパーマーケットで見かけたし、ほんの少し立ち話をすることもあった。
今改めて振り返ると最後に会ったのは、コロナで既にトイレットパーパーがなくなった2月だったと思う。
私がためらいつつも、夜の歯医者に向かう途中に吹き抜けのビルの1階でばったり出会ったのだ。
急ぐ私は、歯医者へ向かうと言って、振り切るように「またね!」と言って「あっ」と何か言いたげな小竹さんを後にしたのだった。


それ以来だから、小竹さんを見かけなくなって既に3ヶ月は過ぎたのだ。
小竹さんが通うスーパーマーケットには、コロナで閉店時間が早くなったことで、私もなかなか足が運べなかったと言うことはあるだろう。
けれど、そのスーパーマーケットに行けば、数人の特徴的な面々には必ずと言っていいぐらいに出会うのだ。
大学の非常勤講師であったに違いないと思われるおじいさん。
白髪は、少し長髪で髪を耳にかけて、必ずジャケットを着ている。冬はウール、夏場は麻だけれど、どれもこれもくたびれていて、講師時代に教壇に立つ際に長く着用していた物に違いない。野菜の一つ一つ、お肉のパック一つ一つ、刺身パックの一つ一つを手にとって、しばらく吟味してからカゴに入れている。
魔女みたいな細い女もいる。歳は70代かもしれないけれど、
黒いストッキングに冬場は編み上げたブーツを履いて、真っ赤な唇はどんな時も濡れたように光っている。栗毛色に染めた髪は、伸びた中華麺の丁度一玉分を垂らしたようだ。
服装は、大抵は黒っぽい膝丈のタイトスカートにジャケットだ。
今は、赤い唇を封印して白いマスクが顔の半分以上を覆っている。
一度、小竹さんと見間違えたのは、中竹さんだ。
あっ、小竹さん!と思ったら、小竹もどきだったのだ。
中竹さんは、小竹さんよりふた周り大きいおばあさんだ。決して太っているわけではなく、背丈が小竹さんより大きくて、おそらく歳も小竹さんより一回りぐらい若いのだと思う。全体的にシャキッとしている。
もう一人、34、5歳だろうか。ムーミンに出てくるミイもいる。いつも上等なイヤホンを耳に入れて、音楽を聴きながら買い物をしている。頭のす天辺には、ちょっと細長い玉ねぎを載せたように髪を結っている。小さなミイは、大きなスニーカーに、淡い小さな花柄のカントリー風のブラウスを合わせたりして、缶詰め売り場で、缶を手に取る、そのミイの横顔に、私は流されないで生きているのよと言うある種の主張を感じる。
 でも何故か小竹さんはいないのだ。
スーパーのお惣菜、お弁当売り場で値引きが始まると、その人の渦の中に必ず小さな小竹さんが紛れていたのに。
何度か、お惣菜売り場を覗いてみたりしたけれど、小竹さんの姿はなかった。




2020年6月6日土曜日

お詫びの一枚



今夜は疲れてしまって、この一枚でごめんなさい。
皆様もお疲れ様でした。
土日もお仕事などでお忙しい方は、暑いのでご自愛ください。

2020年6月5日金曜日

金曜日



物事が難航していても、
まあ金曜日だからいいかと吹っ切る金曜日がある。

今日の東京の最高気温は29度、最低気温は21度、曇りのち晴れの予報です。
蒸し蒸しと暑い上に、混み合う通勤電車はウイルス感染リスクもあって心身ともに疲れましょうが、水分を十分に摂って、
夜にはほっとする時間が持てますように。

2020年6月4日木曜日

ゴールドコイン



いい夢を見たい。
ゴールドコイン。


一斉に咲いたら
金貨がどっさりと積もったようで、
眩しいほどの金色に、私などは発疹が出るかもしれないな。



私が途中でくたばってしまったものだから、
2週間後に向かったスーパーマーケットの隅にあったのは、
しおれたゴールドコインの姿でした。


10万円給付の申請書がやっと届いた。
夢は見られない。
新調した椅子の代金や自宅に籠る時間が長くなったせいか
室内履きの靴下はどれも穴が空いて新しいのを買わねばならない。
全て生活費に充てます。
おっと、届いたのはゴールドコインではなく申請書でした。

2020年6月2日火曜日

Mr.Dokinのとっておきの一枚



2ヶ月ぶりに届いたドキンさんからの写真です。
成田で単身赴任生活を送るドキンさんは、コロナ禍においても
全く変わらない勤務だそうです。
この度は、おきまりの小川沿いのジョギングコースで発見したミシシッピーアカミミガメ(ミドリガメ)の写真です。
モゾモゾという音に気がついて、見ると、カメがバツが悪そうに動かなくなったのでちょっと動かしたそうです。
すると、


こんな穴が。
まさに産卵、自然繁殖しようという時だったと。
2、3時間後にその場に戻ったときには、


産卵後?か小川に帰るところだったと言います。
川べりの草むらやカメの情緒ある景色に懐かしさを覚えました。
しかーし、子供の頃に縁日の屋台で売っていたミドリガメであるミシシッピーアカミミガメは、今や緊急対策外来種となっている。
生態系への影響が懸念され、駆除に苦労する様子などがテレビで放映されることもある。
なので、お手数ですが、次回ジョギングの際にはドキンさんには、卵をほじくり出して処分していただくか、行政に連絡していただきましょう。 
 

2020年6月1日月曜日

テレワークの果てに



 牛男のテレワーク生活もついに終わりを迎えるのかと言う金曜日の朝のこと。
私が、そろそろ寝ようかと言う時に、突然牛男が仕事部屋から萎れたように出てきた。
既に仕事部屋にこもってから3時間は経っていた。
そして、牛男の重い口が、蚊の鳴くような声で、
「悲しいことが起こりました。」と言う。
私は、その言葉にどきりとして、何が起きたのか尋ねるのが怖くなったけれど、元々おしゃべり病の私は、
「どうしたの?何があったの?」と追求の言葉を立て続けに発してしまった。
心臓はドキドキしているのに。


「椅子が壊れちゃった。」牛男の口から出てきた言葉だ。
新たに椅子を購入するのは、痛手だし、私が独身時代から愛用していた小さくて便利な椅子が壊れたのはとても残念だった。
けれど、このコロナ禍でもっと大変な思いをしている人のことを思えば、「なんだぁ」と言う程度に思えた。
そもそも牛男が怪我をしなくて良かったし、時にヘルパーさんや建築士の友人がその椅子にのって作業をしていたから、その時ではなくて本当に良かった。


牛男はいわゆる百貫デブだ。
小さな椅子は牛男のお尻の半分以上がはみ出ていた。
2ヶ月間、土日を除く毎日8時間以上百貫デブが 座り続けたために壊れたんだな。
そして今日夕方に新しい椅子が届いた。
今度は、牛男の大きなお尻が8割方収まる椅子だけれど、畳の部屋なので脚が4本とかの座り心地を追求したものではなく、
いわゆる折りたたみ椅子だ。
でもナカバヤシので7000円 と、やはり痛い出費となる。


水無月を迎えました。
今日の東京は最高気温22度、最低気温19度、曇り時々雨の予報です。
電車での通勤の人が増えるかと存じます。
皆様くれぐれもお気をつけください。