久しぶりのカフェで
心が浮き立っていた。
チーズケーキの底を食べなければ、
グルテンフリーだということに気がついて、
これまた久しぶりのケーキにありつけたし。
「コン、コン、コン」
となりの婦人は、私が座った時には既にうとうととしていた。
そして、テーブルを叩く女が、大きくて驚いた。
髪に、小さなルビーもどきの赤いラインストーンが一列に煌めくカチューシャをしていた。
カチューシャは赤の女の必須アイテムだ。
まさか。
妊婦のように見えるのは、黒のタートルネックのインナーに
ベージュのふわっとしたワンピースを着ているからだろうか。
ベージュだけれど、それは間違いなく赤の女だった。
顔も体もいつかのようにふやけて大きい赤の女だ。
この前赤を着ていた女だった。
二人は、席を変えて向かいあった。
赤の女が、ミルク珈琲を運んできて、
「黒糖が入って美味しいのよ。これ。」と言った。
その後、二人は顔を寄せて、
肘をついた両手で、顔を支えていた。
鏡に映ったように同じポーズだった。
赤2号も昨夜は、黒のタートルネックのインナーにベージュのセーターだった。
でも、年明けにどこぞの駅で、待ち合わせの約束をしていた。
親子だけれど、別に住んでいるのかもしれない。
共に昨夜も、仕事帰りだったように見える。
赤の女の黒革のバッグがそう思わせた。
その黒いバッグには小玉スイカぐらいの大きなイエローのファーのボンボンが付いていた。
ベージュのワンピースには青い大きなオーバルカットの平べったい石のペンダントをしていた。
ラピスラズリだろうか。
上からおさらいすると、カチューシャは赤いラインストーン、
洋服は黒いインナーにベージュのワンピース、ワンピースの裾にはオレンジ色の花柄のプリントがある。ペンダントは青。バッグは黒にイエローの大きなボンボン。黒いタイツだ。
巷はクリスマスで赤く染まっているのに、
赤の女は、レインボーだった。
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