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2021年2月8日月曜日

卒業旅行

 

このコロナ禍で学生へのインタビューがテレビ番組で流れた。
「飲食店でのアルバイトが減って、親からの仕送りも減って大変です。」という声に同情を寄せる。
「卒業旅行に行けなくなって」という声に、私は「なぬー」と言った。
無口という病気の牛男からも「なに?」 という感嘆が漏れた。

 

でも待てよ、私は行ったぞと思い出す。
私より年長の牛男の世代は卒業旅行などなかったかもしれないけれど、私の頃からか卒業旅行に学生が海外へ行くようになっていた。
私はと言うと、卒業旅行に高校時代の親友たちと、江ノ島の岩本楼に泊まったのだった。江ノ島は、横浜市内の大概の小学一年生の遠足の先だ。
卒業旅行の江ノ島の夜、空に浮かんだ月が三日月であったか、上弦の月であったかは、覚えていないけれど、親友の話の中身はよく覚えている。
新鮮なお刺身や天ぷら、茶碗蒸など豪勢な食事を食べながら、ビールを飲んで少し上気したS子の話に、私は、ひたすら「ふーん、ふーん」頷いた。
普段、話の長い私だけれど、その日には訳があって私はあまり喋らなかった。
喋ってはいられなかったというのが実のところで、話も長い私は、お風呂も長いのだ。岩本楼の洞窟風呂とやらに少しでも長く浸かっていたかったのだ。
最初は、S子と今では同窓会に出席する意味ってなんなんだ?というA子と3人で洞窟風呂に入った。私は広い湯船で他に客人がいないのをいいことに、バタ足をしたり平泳ぎの真似をしたりして、はしゃいだ。
S子が「もー」と跳ね上がる飛沫に迷惑そうにしながらも優しく笑った。そのS子の表情を確かめた私は、続けてバシャバシャとやった。
そしてS子は早々に「私は上がるよ!」と言って浴場を後にした。 
私の長湯にA子が「付き合うよ。」と言ってくれたのだったけれど、A子は途中で気分が悪いと言い出した。ふらついたA子はのぼせてしまったのだった。私は一度はA子と部屋に戻ったものの、再び1人で洞窟風呂に入って遊んだ。
翌朝5時に起きた私は「お風呂へ行ってくる」と言うと、布団の中からA子が「具合悪くなるから付き合わないよ。」と入浴セットを抱えている私に心配そうに声をかけてきた。 
するとS子が眠そうに「ほっとけばいいよ。」と言った。

 
他愛のない一コマだけれど、青春の思い出といものは、何故だか宝石のように美しく思うものだな。
バイト代が稼げないのも現実的な大問題だけれど、卒業旅行に行かれないのも、後にも寂しく思うかもしれない。


 
今日の東京の最高気温は9度、最低気温は0度、晴れの予報です。月曜日を迎えました、東京ではぬるむ日もありますが、今日はまた寒いようです。
今週もお互い、コロナに注意しつつやってまいりましょう。
本日もご来訪いただきまして有難うございました。

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