下倉節子 夏の日 |
婦人の表情や顔の向きは、夏の気配を伝えていない。
けれど、無造作に放り出されたような脚と足の指先から、
逃れようのない夏の暑さが伝わってくる。
そして改めて彫像全体を眺めると、実は婦人の向く先には窓があって、風を待つひと時ではないかと想像したりする。
婦人の細くもなく太くもなく程よい肉付きの腕に支えられた、身体がほんの少しだけ後ろに傾いている。
彫像は、大げさに夏の暑さを語ったりしていない。
あくまでも自然体だ。
しばらく眺めていると、サイダーの冷んやりに一息入れた子供の頃の夏が思い出され、ノスタルジックな思いに駆られた。
この度の画像は、中学時代の恩師である下倉節子先生ご自身が送ってくださったものです。
今年も彫刻10人展が開催され、ご案内をいただきましたが、
新型コロナウイルスが怖いこと、日の入り時刻が伸びて、
真っ暗になるのがもはや18時半になっていること、
で私は、せっかくの展覧会に伺うことを断念したのです。
2020彫刻10人展は、
今週の23日月曜日から銀座アートホールで29日日曜日まで開催されています。
下倉節子 |
皮膚の、肉の微妙な起伏の陰影や像の立ち上がっているさまを見つめているうちに得られるものは何なのだろうと考える。
生身の身体に肉薄したということがもはや薄っぺらで、
異次元のエネルギーが感じられるのだ。
下倉節子 |
展覧会に伺えないことが惜しまれて、惜しまれて、
今更ながらに、新型コロナウイルスと自らの奇病を嘆いていました。
そんな中で、昨日恩師である下倉先生が、写真を送って下さったのです。おかげで、自宅に居ながらにして、 夢中になって彫像を味わうことができました。
下倉節子 冬の日 |
最後の一枚は、冬の日です。
首にしっかりと巻かれたファー、温もりを感じるセーターとブーツから冬が伝わり、
顔の向きや視線、足の位置からは、寒い日に外に出る前のちょっとした覚悟の瞬間が、感じられるお作品だと思います。
空間を揺らす実像をじっくり鑑賞したかったと切なる思いが残りました。
昨年のお作品はこちらです。2019彫刻10人展
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