ウルフムーンの夜、
彼女はいた。
「昨日と一昨日はどうしていたの?」
「もしかして昼間のシフトだったのかな?」
コーヒーをカップに注ぐ彼女の背中はとても小さい。
桜草の君、彼女がいるだけで 満足な私は、かける言葉も彼方に彼女の背中を見つめ続けた。
不意に彼女が振り向いて、「ありがとうございました」とコーヒーカップを置いた。
微笑む彼女の瞳は三日月になる。
雨上がりの月曜の夜ほどではなかったけれど、
密を避けるテーブルを少しの間探して、慣れない席に腰を下ろした。
コーヒーの温もりで温まった掌をそっとカップから離して前を見ると、席に座っていた老人のセーターがとても美しかった。
手編みのそれは、綺麗に目が揃って、白でもない、グレーでもない
、曇ったガラス窓から見る雪景色のようであった。
そんなセーターには、ネイビーブルーのデニムとマフラーを合わせていた。
何枚もの紙の資料に目を通していた老人は、携帯で話を始めた。
どうやらマンションの管理組合の役員らしい。
月曜日は、雨上がりだったからか、25日の給料日だったからか、
ビジネスパーソンでいつもより混んでいた。
雪も舞った木曜日の夜は、厳しい冷え込みで、私はコートを着たままコーヒーを啜った。
周りを見ると、ぽつんぽつんといた人々も皆コートを着たままだった。
ウルフムーンには、思い浮かんだ願い事を紙に書いて、ウルフムーンに向かって読み上げ、その後紙を破り捨てて、土の中に埋めると願いが叶うという。
そんな話をしながら、彼女の細い肩を抱いて家まで送ってあげたい満月の夜でした。
1月最後の日となる今日の東京の最高気温は14度、最低気温は1度、曇り時々晴れの予報です。
本日も当ブログにご来訪いただきまして有難うございました。
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