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2018年5月17日木曜日

カフェにて



しばらく前からカフェのゆで卵にはまっている。
黄身の中心だけがほんのちょっと半熟で、
かすかに感じられる程度の塩味があって、
一つ食べると止められなくなる美味しさなのだ。
試しに、スーパーマーケットやコンビニでゆで卵を買って食べてみたけれど、どちらも塩味が出しゃばっている。


カフェでこのゆで卵を連日食べることもあるけれど、
1個だけにしている。
コレステロールを気にして、1週間止めたこともある。
昨夜のカフェは、いつもの席に先客があって、
奥の席に座った。
コンコン、コンコン、カフェに音が響いた。
私が、ゆで卵をトレーに当てる音が響き渡った。
音は響いたけれど、肝心の卵の殻には傷ひとつ入らなかった。
私の前にはゆったりとフランス刺繍をする夫人、
私の斜め前には、 グラニータを飲みながら仕事をしている男性、
私の後ろには紺色のスーツをパリッと着込んで仕事をしている女性、
その隣には沈黙の女性、黒の女がいた。
昨夜のカフェは全く雑音がなく、不気味なほど静かだった。
フランス刺繍の夫人が鼻歌でも歌ってくれたなら、
仕事をする人達がパソコンのキーボードを激しく叩いてくれたら、
私はどんなに気楽に卵の殻を割ることができただろう。
このままゆで卵を持って帰ろうかとも思った。
でもお腹も空いていた。
私は仕方なく、今度はテーブルに卵を当てた。
卵の殻に小さなひびが入ったのが確認できた時、私はほっとした。


やはりゆで卵は美味しかった。
静寂の中で私は葛藤した。
二個目が食べたい。
二個目は控えるべきか。
悩んだ挙句に初めて二個目を食べた。
小皿に載せられた二個目は、
「コン!」とテーブルに当てて一発勝負だ。
勝負あり。
美味しかった。

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