ヘルプマークを初めて手にした。
そしてこれをバッグにぶら下げてお通夜に参列したのだ。
お通夜は、帰宅時のラッシュアワーに当たるので、
優先席に座ることは難しいと思ったからだ。
ヘルプマークの存在は昨年知ったけれど、多くの障害のある方たちと同様に私もこれをもらいに行くことができないのだ。
ヘルプマークは、外見からはわからない人工関節の人や難病の人、妊娠初期の人などの援助や配慮が必要な人のサインだ。
配布しているのは、都営地下鉄のいくつかの駅と都バスのいくつかの営業所だ。都バスの営業所の営業時間に行くことはできないし、都営地下鉄の指定駅まで行くのが厄介だ。
最近の新聞記事に障害のある人がこのヘルプマークをもらいに出ることができずに、仕方なくネットで購入したとあった。
本来無料で対象者に配布されるものだ。
私は、このヘルプマークは「絵に描いた餅」と思って諦めていた。この赤い札をぶら下げても、優先席に座れるとは限らないとも思ったからだ。私は杖歩行だけれど、優先席に座われることは滅多にないから。
私が座席に座れないことでの支障は、電車内の低い天井に張り付いた蛍光管やLEDの光だ。立ちんぼだと顔や眼、上腕に光源が 近くて、眼の痛みや皮膚の痛みで乗車がままならないのだ。
だから、電車を利用するのは、外出が可能な夜間のなるべく土日など休日を選ぶのだ。平日夜の場合は、混み合った電車は乗車を見送って優先席が空いていることを確認してから乗車している。
お通夜は平日だった。
そこで障害者支援センターの担当者にヘルプマークが欲しい旨をを話してみた。
するとセンターのスタッフが都営バスの営業所まで取りに行ってくれて、自宅まで届けてくれて入手することができたのだ。
いざこの目立つマークをぶる下げて乗車したものの、優先席付近は密林の人だ。
優先席に座る人たちにこのマークが見えるはずもない。
私は、密林の隙間から優先席を覗いて見た。
すると、3人がけの真ん中の女性は、メイク中だった。ファンデーションを塗ることから始めていた。その右の女性はお菓子のタブレットを口に放り込んだかと思ったら、スマホに夢中になった。左の男性はスマホに夢中で顔を上げない。
密林の中の隣の男性が私の杖に気がついて、優先席を覗き混んで、眉を描いている女性を見て、ため息をついていた。
顔をガードするために完全遮光の帽子を出そうとした時、電車が急停車して私は、優先席の前に押し出された。
するとタブレットを食らう女が気がついて席を譲ってくれた。
杖に気がついたのか、ヘルプマークに気がついたのかどちらだかはわからない。
これを機会に、 ヘルプマークをぶら下げようと思う。
そうすることで周知されるかもしれない。
周知されれば、他の誰かが救われるかもしれないのだ。