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2017年6月1日木曜日

6月のカフェ

飯田商事

夜の異空間を求めて、
都会のカフェに足を運んだ。
重い扉の向こう側、
仕事帰りの人々が、
席を埋めていた。
吸い寄せられるように、
入口近くの椅子にかけている女性の隣に、
席を取った。
とうきゅうフローラ

女性は、文庫本を片手に、やや身体を屈めていた。
女性の控えめに組んだ足の足先が、
私に当たるかと思ったとき、
女性は静かに足を下ろした。
 ベージュのパンツに、
 ベージュの丈の長いカーディガンを合わせている。
艶やかな長い栗色の髪の毛先がゆるくうねって、
カーディガンに甘えるように下りていた。


まるでファッション誌をめくったような画像だ。
30代半ばに見えるけれど、
40歳を超えているのかもしれない。
艶やかだったから。
整った顔は、ナチュラルメイクで、
ファションも髪型も全てがさりげなかった。
 
長い髪の女性の反対側テーブルを見ると、
仕事帰りであろう4人の女性たちが
向かいあって賑やかに、会話を楽しんでいた。
青山フラワーマーケット

4人は、ベージュの女性より若かった。
4人が4人とも、バッグから靴まで、気を使っている感じが初々しかった。
私は、オーダーしたババを貪るように食べて、
唇についたババのシロップを、
拭おうとする自分が田舎者で、
カフェの空気に馴染んでいない気がした。
そんなことを考えていると、
ベージュの女が、席を立って出て行ってしまった。
椅子を引く音も、荷物をまとめる音も、
カフェの空気に消えて、
風のように行ってしまった。
すぐさま、
次の女が椅子を引いた。
ダークグレーのスリムなスーツに
黒いブラウスを合わせていた。
さっとジャケットを椅子にかけると、
ハードワークでお腹が減っていたのだろうか。
バニーニにかぶりついた。
ショートヘアのその女には、
女らしさがなかったけれど、自信に満ちた強さがあって
凛として美しかった。
日比谷花壇

再び4人の女性の方に目をやると、
帰り支度を始めていて、
ガヤガヤとカフェを出て行ってしまった。









都会のカフェは、並ぶスイーツもどことなくおしゃれだ。
4人の女たちの後には、
長い黒髪の、
しっとりした女が、
静かに椅子に腰をかけた。


都会の夜のカフェは
七変化。
紫陽花の如し。

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