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2017年5月29日月曜日

おしゃべり病

レ ミルフォイユドゥ リベルテ

良人は無口という病気だ。
私は、生来のおしゃべり病だ。
お互いにお互いの病気が理解できないまま月日が流れている。
おしゃべり病は、
おしゃべりが止まらない病気だ。
おしゃべり病は、
しゃべらなければ死にそうになる病気だ。
カシスソルベ
私がしゃべろうとすると、
良人は耳をふさぐ。
良人をしゃべらせようと、
「歯医者の帰りに何を食べたの?」と聞いてみる。
すると良人は、口に両手を当てて口を覆ってしまう。
健康で、働いていた時には、
感じたことがなかった苦痛だ。
朝から打ち合わせ、会議、出向いて案件の説明、
出張と、人と話をしない日などあり得なかった。
それが、どうだ。
誰ともしゃべらない日を繰り返すこと、12年だ。
光線過敏の症状が始まって9年だけれど、それより前の2005年からこの難病の他の症状が始まっているから。
しかも今時分は、日が長いので窓を塞いだ室内に21時間篭っている。
先週の土曜日に
「しゃべらなければ死んじゃう!」と良人に訴えた。
すると良人は、
「死んじゃえ!」と答えた。
そして次に「スカイプしろ!」と言った。
先週の土曜の夜は、オレンジカウンティーに住むMrs.S子がスカイプで話相手になってくれた。
「みんなが定年になるの待つしかないわね。」S子は言った。
28歳の同級生は28歳だ。
気の遠くなるような先の話だ。
みんなが定年する頃には本当に死んじゃうだろうな。
昨夜は、偶然、富美子さんに出会った。
富美子さんには、元気に働いていた時にお部屋を借りていたのだ。
ジョナサンに向かいあって座った。
「あんこさんいくつになった?」と富美子さんに聞かれた。
「28歳よ。」と私は答える。
「えっ」と目を丸くした富美子さん。
「富美子さんは、おいくつなの?」と尋ねてみた。
「30よ。」と今度は富美子さんが平然と答える。
「28?」
「30」「28?」「30」が繰り返されて、
私が笑って、富美子さんも笑う。
富美子さんとの会話は時として不毛だ。
でもそれが、楽しい。
一週間分の、話溜をした夜だった。


ジョナサンでは今、ダージリンファーストフラッッシュが味わえます。
今日月曜日の東京は、最高気温28度、最適気温18度、晴れ時々曇りの予報です。
普通に働いておられる方は、
顔も見たくない人もいるでしょう。
口をききたくない人もいるでしょう。
でも、今はそれすら羨ましい気もします。


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