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2017年6月15日木曜日

真夜中のファミレス



ドラキュラは、
辛い季節を迎えた。
太陽の光が夜の7時でも街に降りて、
夜中の3時半には、
再び街の空気に忍び込んでくるものだから。
午前0時を回るとき、
何度も自問自答する。
それでも行くのか。
朝日が突き刺さる時刻は早い。
それでも行くのか。
昼間の通院は、
夜の爆睡をもたらした。
気がつけば、草木も眠る丑三つ時だ。
行くのか。
止めるのか。
正味一時間居られるかどうかだ。
あれこれと食い散らかすことはできない。
それでも行くのか。


決断した。
通院のストレスを払拭したくて、思い切って出かけた。
この2ヶ月ばかりは、0時を回ってから、ジョナサンに行くことはなくなった。
時間を気にしては、寛ぐことができないから。



今宵は一本勝負だ。
マグロとアボガドのサラダごはん。
マグロとアボガドは言わずと知れたコンビだ。
レタスを外してもらっても、なお美しいお皿に見とれて、
夜中の常連女に気がつかなかった。
少し先に、常連女がいた。
冬の間、毎日黒いセーターを着ていた常連女は、
夏も黒かった。
時に電車の始発時刻まで居る黒い女は、
真夜中の女なので、夜の早い時間に足を運ぶようになってからは、あまり見ることがなかった。
黒いけれど、
影のない健康的な感じの中年女だ。
看護師長と勝手に名付けている。
実際は、看護副師長かと推察している。

看護師長には珍しく連れがいるのか、女と喋っている。
衝立で、連れの女は見られない。
二人の会話を聞いている暇はない。
食べて、飲んだら即刻退散だ。
「男に自信もたせちゃダメよ。」
師長が言った。
どうやら人生の重苦しい話をしているようだ。
通院で疲れた身体と心には、薬にもならない話だ。
時刻も気になって、話は染み入って来ない。
「明日は、ここは掃除でお休みよ。」という師長の言葉だけが、
心に響いた。
傘をさして歩いた夜道の先に、
清掃のため休業の札が立っていたことがある。
月夜の晩だったこともある。
その時のドラキュラの落胆がどんなものであったか。
熟女二人の会話から、今夜はそれを味わわずに済んだ。


熟女二人。
そう、連れの女だと思われた会話の相手は、
もう一人の別の常連女だった。
若い頃、黒の網タイツを履いて踊っていたふうな、
元ダンサーという感じの。
元ダンサーは、想像どおり、東北訛りだった。
元ダンサーだったかどうかはわからない。




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