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2020年5月16日土曜日

無口という病気24

置地廣場

 おはようもこんばんはも言わない無口という病気の良人(りょうじん)は、テレワークが続いている。
そんな中で気になることがある。
良人は、毎朝6時には、日の当たる部屋に閉じ篭って仕事をしている。
私は太陽光に全く当たることができないドラキュラなので、良人が仕事をしている日中は、太陽光を完全に遮断した居間で眠っている。


そして、ある昼間、良人がわざわざベランダに出て電話をしてることに気が付いた。
私は、ベランダのドアの開閉の音で目が覚めたのだった。
私はその電話の様子を覗き見ることはできない。
何故なら、私の眠る居間の窓は完全に塞いでしまっているし、そもそも太陽光が降り注ぐ景色など見ることはできないのだ。
私は半分夢の中で、「なんだ仕事だと喋るじゃないか。」 と思った。
思い返せば、「喋れ!」と私が言うと、それでは金をくれとばかりに良人は無言で手を差し出したことがあった。


 しかし、何故、わざわざベランダに出て電話をするのだろう。
私は良人に切り出した。
「私が隣の部屋で寝ているからといって、気を遣ってわざわざベランダに出て仕事の電話をかけなくても大丈夫よ。 私は、話し声で起きやしないから。」
すると無口という病気の良人が一言だけ喋った。
「いいえ、横槍を入れられるのが嫌だから、ベランダで電話しているのです。」


私には返す言葉がなかった。

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