冷蔵庫の棚も空っぽになったので、
夜の早いうちにスーパーマーケットに向かった。
道すがら、軒を連ねる居酒屋にも灯る灯りはなく、ビルの入り口に並んだ各店舗の電子看板だけが、忘れてくれるなとばかりに明るく灯っていた。
8時を回ったばかりだというのに目的のスーパーマーケットは営業時間が短縮されて真っ暗だった。
9時閉店となった別のスーパーマーケットでは、混み合うほどの人もなく、レジ待ちの人もいなかったので心配なく買い物ができた。
帰途、暗い公園から人々の声が響いて来た。
「くしゃみがいけないんだってよ」
何人かの人がいるようだけれど、暗くて見えなかった。
マスクもないし、と言う声も聞こえて来た。
街の不穏な気配に何か大変なことが起きているのはわかるけれど、一体それが何なのだかわからない様子だった。
コロナやウイルスという具体的な言葉は聞こえてこなかった。
ネットの情報も得られない路上生活者は、生命をも脅かす ウイルス感染を良くわかっていないのではなかろうか。
私は、事情だけでも伝えたい気持ちに駆られたけれど、下を向いて帰宅してしまった。
東京都では、ネットカフェ難民などの対策に500戸の借り上げげ住居を検討しているようだけれど、どうも路上生活者への支援が見えない。
住居のない人には、例のマスクも届かないのだ。
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