消費税が上がった後は、
カフェを移籍すると決めていた。
一杯400円を超えるコーヒーはやはりプータローには痛い。
心残りは、落ち着いた空間と綺麗なトイレと優しいスタッフと清潔に努める店長だ。
いつも清潔なトイレは、2ヶ月ほど前からアロマが焚かれて、いい香りが漂っていた。
いくつものドラマも生まれた。
それは私の勝手な妄想によるものがほとんどだったけれど。
そのヒロインであった赤の女は、現れなくなって久しい。
一年以上になるだろうか。
もう、赤の女はカフェには来ないだろう。
ひょっとすると、この世にはいないのではないだろうか。
そう思うことで、赤の女への未練を断とうとしているのかもしれない。
そんなことを考えていたら、そのカフェのプリペイドカードにまだ残高があったことに気が付いた。
しとしとと雨が降る夜に、私は買い物を済ませた足でカフェに寄った。
午後の9時になろうかという時刻だった。
これには訳がある。
9時までは、カフェの向かいのメガネ屋のLEDの看板が煌々と点いているのだ。
LED看板は天井のライトより厄介なのだ。
避けようもなく正面から顔を照射するのだ。
自動ドアがすーっと開いて、
吸い込まれるようにカフェに入った私は、
横目でいつもの指定席が空いていることを確認した。
すると、カウンターに立っていたスタッフのなでしこさんが、
「お客様、店内でお召し上がりでしょうか?」と声をかけてきた。
その言葉に私は嫌な予感がした。
そしてその予感は的中した。
10月1日から閉店時間が午後9時になったのだという。
自ら決別しようと言うのに、
9時閉店という私にとっての三行半となる閉店時間が、悔しくもあった。
思えば、この春に値上げしてから、客の数は目に見えて減っていた。
誰かが、犬の遠吠えのように店内で突然吠えても、どよめくほどの人がいなかったのだ。
かくして、かつての幾杯ものコーヒーの写真は思い出になった。
もう新しいドラマは生まれないのだ。
今日の東京の最高気温は26度、最低気温は19度、晴れの予報です。
また暑い日とるようです。
今日はアイスコーヒーが美味しいでしょうか。
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