翁家 |
きらりと、良人の小さな瞳に一等星が輝いた。
水曜日のこと。
良人は、ずっと生気なく仕事も休みがちであった。
再びのうつ病かと案じていた。
そして珍しく口を開いた。
聞けば、来週の月曜日と火曜日は天皇陛下の即位の礼で休日だから、ママの元に帰るというのだ。
太り切った身体はだらんとしていたのに、
今にも弾けそうな様子に豹変していた。
来週であったかと思った私。
プータローだからか不信心者だからか。
平素の祝日は、良人の会社は休みではないけれど、
即位礼の日はお休みになるのだと言う。
そして、昨日良人は旅行鞄を大事に抱えて転げるように家を飛び出して行った。
日が沈んで、納戸に入ると増税前に買った良人の下着が入った箱の蓋は開いたままだった。
通院で疲れてしまった私は洗濯をしていなかったのだ。
良人は、無口という病気で口は開かないけれど、
引き出しも、蓋も開けっぱなしの人間なのだ。
ママに、のびのびと育てられちまったんだな。
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