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2018年11月16日金曜日

ドラキュラ的生活15



 冷たい夜風が山茶花を揺らす今時が、
ドラキュラの本当の黄金週間だ。
でもこんな時に解き放たれても、
夜空が寒くて飛べやしない。


 夕方の5時を少し回って、
一度街に出て、外の空気を吸う。
太陽光を防いだ部屋には窓がない。
窓は潰したのだ。
Christian Louboutin

飛び出して、
一瞬にして肩をすぼめて背中を屈めて歩き出す。
オフィスからなだれ出てくる人々もひたすらに下を向いてせっせと歩き行く。
ドラキュラは、日の入り時刻に合わせて就眠時間を変えられなくなってきた。


マクドナルドでSサイズのコーヒーを手にして座った。
ドラキュラの正面には、
ショートボブの小柄な女が、
トレーの上にのった箱を開けるところだった。
グレーのサーターに白いパンツ、
シンプルをモットーに生きる私を主張しているかのような女だ。
そんな彼女が、箱を開ける時に表情が緩んだように見えた。
箱の中身はチキンナゲットではないと直感した。
プラスティックのフォークに刺して、そっと口の中に入れた。
スイーツだと確信したドラキュラは、スマホでデザートメニューを探してみた。
シナモンシュガーがとろっとパンにかかったものに違いない。
ドラキュラは真似てみた。
それは、コロコロと角切りのパンに甘い蜜がたっぷりとかかっていた。
ショートボブの女のようにフォークで口にそっと入れてみた。
甘くて、ふわふわで、春のような味だった。
でも3つだけ。
時間がないのだ。
おさんどんのために急いで戻る。






再び、夜の街へと飛び出すのは夜の8時を回ってから。




下町のカフェに陽気な人はいない。
誰しもが不機嫌な顔をしている。
夜の長い黄金週間にあるドラキュラだって、
浮かれポンチになれなくなってしまった。


ドラキュラの黄金週間は来月9日まで。
12月10日に地獄の扉が開いて、
1分また1分と日の入り時刻が延びていくのです。

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