渋谷に行って、
出会ったのは、
赤坂氏だった。
恵比寿でぶらり途中下車の旅のように途中下車したものだから、
目当ての丸井にあるブティックは到着するなりクローズの時間だった。
日の入り時間が伸びてしまったのが恨めしい。
ハチ公前で踊るのは光のパフォーマーだろうと思って、
丸井に向かう時は通り過ぎた。
再びスクランブル交差点に戻ってきて、薫風に揺れる旗に気がついた。
マック赤坂氏に写真撮影を頼む外国人観光客は、ピンクのブラジャーつけたこの男性が、
国政選挙に4回、都知事選挙に4回出馬し、つい最近も都議会百条委員会で、ヤジって退出させられた人物だとわかっているだろうか。
渋谷の街を照らす、
三日月とマック赤坂氏だった。
渋谷のスクランブル交差点は、
外国人には大人気なのだろう。
やたらと自撮りする外国人観光客が目についた。
「すみません。」
クレープの移動販売の車を撮っていると声をかけられた。
渋谷のスクランブル交差点で声をかけられるのは、
女子大生の時以来だった。
「お姉さん、すごく素敵だったから、ずっとついてきちゃいました。」
声をかけてきたのは、可愛い小柄な女性だった。
「お姉さん、近くで働いているんですか?」
背中に自称28歳独身OLと貼ってあるとおり、
「そうよ。」と私。
『お姉さん』
と言うその一言で、天にものぼる心地になった私は、
彼女の話を真剣に聞いた。
それは、エステの勧誘だった。
「本当にすごく素敵だったら、エステの必要はないんじゃない?」と私は、『おばさん』のような切り返しをしてしまった。
お姉さんと言ってくれた人に。
私は、彼女の肩にそっと手を置いて、「お金がないOLなのよ。」と優しくお断りした。
丸井にあるブティックがクローズで、松川のうなぎと西村フルーツだけのために来たようなものとなった渋谷だったけれど、
『お姉さん』と言うゴールデンな言葉が嬉しかった。
松川のうなぎは既に売り切れでがっくりしたけれど、
お姉さんは気をとりなおして、
お隣の下高井戸旭鮨で握りを食べた。
旭寿司も有名だけれど、初めてだった。
十貫の握りは、わずか3分で完食した。
干瓢巻きの干瓢が、今時珍しい、国産だと記してあった。
亡くなった母の好物で、命日でもあったので、お供え用に干瓢巻きを作ってもらった。
いつもの西村フルーツへ。
いつもと言っても、お店は改装されていて、間違えたかと思った。
改装してから既に1年半は経っているそうだ。
夜の10時半を過ぎても、
ハチ公前に、若者に囲まれたマック氏が、
踊ったり、写真撮影に応えていた。
帰りのガラガラの電車内で、
座った私は、足を伸ばしてバタバタとバタ足をした。
山の彼方で、ヤッホーといえばヤッホーと返ってくるように、
「お姉さん」がこだましたゴールデンな夜だった。
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