過去 1 週間のページビュー

2016年10月30日日曜日

カフェにて

青山フラワーマーケット

『スパルタ』
という言葉を思い出したのは二週間前の土曜の夜だった。
久しぶりとなったカフェに二人はまた座っていた。
同じ窓際の席にこの前と同じように並んでいた。
小学生の女の子とお父さんだ。
「やり直し!」
「書き直せよ!」
「分数で書け!」
女の子の、消しゴムに力を込めた手が忙しく動く。
女の子は、決して口答えはしない。
指導にくらいつこうと真剣だ。
柿色のセーターを着ていた父親と
紺色のパーカーを着ていた女の子、
二人は燃えていた。
秋は受験勉強でも山場なんだな。
宿題すらやらないでいいと言われて、
育ったものだから、
とても羨ましかった。
「勉強がわからなくなったら嫌だ! 」と言ったら、
「そうしたら学校休めばいい。」と言われた。
おかげで、馬鹿が馬鹿のまま大人になってしまって、
今でも親を恨んでいる。
昨夜は、探し求めていた胡蝶蘭が手に入って、
少しばかり嬉しくもあって、二人を見ていた。
しかし、昨夜の二人は静かだった。
父親は国語の長文をずっと読んでいたかと思ったら、
次には外車のカタログを熱心に見ていた。
お嬢さんが御三家に合格したら、
さらにグレードアップした外車に買い替えようと思っているに違いない。
 
多くの問題用紙を後にして、トイレに行った女の子。
戻るや否や、父親であり監督でもある人の、
大きなコーヒーカップを返却口に下げに行った。
その小さな顔にかけられたメガネのレンズは、
牛乳瓶の底のように厚かった。
昨夜の入店は午後9時ギリギリだったので、熱血指導の時を既にすぎていたのかもしれない。
女の子のお片づけが終わると、二人は出て行った。
合格を祈ろう。




0 件のコメント: