撤去されていて、ほっと肩を撫で下ろした。
クリスマスの華やぎにあやかりながら、
ビルヂング内に据えられた巨大なクリスマスツリーが1日も早く撤去されることを待ち望むこの1ヶ月半だった。
今年のそれはLED の小さな電球がちらちらするのではなく、
シャープなLEDの直管が天まで届けとばかりに縦に張り巡らされて強烈な光を放つロケットのようなクリスマスツリーだった。
ドラキュラである私は、遠目にも直視できず、近けるはずもなく、その方の入り口は利用できなくなった。
何より、離れた上位階のマックにもその姿が映るものだから、さあ大変。
天井のない吹き抜けの所や、天井があってもスポットの小さなライトがポツリポツリだけのマックはドラキュラにとって羽を休めることができる貴重な場所なのである。
ところが、強烈な輝きのクリスマスツリーのおかげで、気の向くままに着席することができなくなっていた。
柱の影に隠れるか、はたまた最後部の席か。
ある晩のこと、輝くツリーから壁に隠れたテーブル席の私の身体は否応無しに、少女の方を向くことになった。
少女とドラキュラである私との間は、手が届きそうで届かない微妙な距離にあった。
私は、やれやれとコーヒーを口に含んでカップをテーブルに置くと、白いマスクの制服姿のその女子高校生に惹かれていった。
気がつくと心の中で
「少女よ」
「少女よ」
「少女よ」
と幾度となく続けていた。
マスクのおかげで顔の造作や表情までも知れない。
少女はおそらくは中背で、痩せず太り過ぎず、かかる前髪を時々撫でるようにして、ひたすらにペンを走らせ、食い入るようにテキストを見てまさに勉学に励んでいた。
少女のペンを握る指先から、揃えた膝小僧から、少し屈めた背中から少女の放つ何かが感じられて
「少女よ」「少女よ」と声にならない言葉を私は投げかけるように繰り返したのだろう。
見つめる私に、いつ少女が牙を剥いてもおかしくなかった。
でも少女はそのままでいてくれた。
今日の東京の最高気温は10度、最低気温は1度、晴れの予報です。
何かとお忙しい年の瀬に、当ブログにご来訪頂きましてありがとうございました。
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