あの世の人々にいたぶられているのか、
春のお彼岸、桜の季節に私は身体が故障する。
そうして、懲りもせずに、毎度もうお終いだなと思う。
とりわけ杉花粉の多い年が良くない。
かつてはこの季節に入院を繰り返してきたのも事実ではある。
ブログを顧みても、2019年の桜の季節に、友人にデートのキャンセルをお伝えして、これまでお世話になりましたと言ったなんて綴っている。
この度は、あの世の待合室に通されて、ちょっとお待ち下さいと言われてお茶でも出されているような感じだ。
夕暮れ時に、良人(りょうじん)に崎陽軒のお弁当を買いに出てもらった。
良人はほころび始めた桜を撮ってきてくれたであろうから、今宵も牛男の写真で凌ごうと、中華弁当を少し口にした後にそのまま眠ってしまった。
一度、「うるさいよ!」と牛男が部屋のドアを開けて怒鳴りつけてきた。私は、悪夢を見ていたのだった。
この度は、唾液が一滴もというぐらいに出てこない。
つい三日前に起床して、舌がうまく収まらないことに気が付いた。
口の中を見ると舌の下に普段は気がつかない唾液腺が古木の根のようにりゅうりゅうとして今にも破裂しそうだった。
年がら年中、抱える難病で口渇が悩ましいのだけれど、2月に入ってから異様に乾くようになっていた。
口の中は赤黒く、お煎餅のかけらでも刺さったら、真っ赤な血が今にも吹き出してきそうだ。
おまけに耳下腺にもコブができている。
私は、卒倒しそうになった。
どうやら、シェーグレンはもとより私の疾患でも、そういう事が起こるらしい。
ぎゃーぎゃーと騒ぐ私を横目に、良人が調べた。
という訳で、美味しい崎陽軒の中華弁当も、唾液が出て来ないので、口の中に散らばってしまって、上手く飲み込めないのだ。
喘息も出ているので、安静に努めている。
幸いにして、パスシステムでサザエのおはぎや華桔梗の葛桜を注文していたので、お供えを欠かすことはない。
きっと本番では、母が「あんこちゃん、お迎えに来ましたよ。」と優しい声で夢に出てくるに違いないと私は思っている。
さて、悪夢のお話し。
闇の深い丑三つ時に、灯りが灯っていたら訪ねようと家を見上げた。何十段もの石階段の先に木の塀に囲われた大きな木造の家があった。門灯も点いていなかったので私は登らずに諦めて、再び歩き始めた。
道を照らす街灯もなく、闇が続く。
闇の中にぼんやりと人影を認めて、身構えると向こうから近づいて来た。
若い女だった。
そしてその女がマスクをつけていないことに気がついた。
私は必死で、「近づかないで、あっちへ行って!」と何度も叫んだ。
なんとも夢までコロナだ。
あの世の人々は、この世のコロナ地獄をどう見ているだろう。
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