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2018年7月26日木曜日

美容室巡り残酷物語2



 惨めな寒い夜もあった。
当て所ない美容室巡りは、
今年に入ってから実は2回目なのだ。
お世話になっていた美容師からもう夜はできないと告げれたのは、まだ寒さの厳しい2月の半ばだった。
住まう街にも美容室は星の数ほどある。
けれど、駅周辺に展開するチェーンの美容室は
競うように照明を明るくして眩しいほどに白いスペースを作り出している。
そんな美容室で頭上の灯りを一つ消してもらったところでどうにもならない。
その中で一軒だけ、
カフェのように仄かな照明がいくつか点いているだけの美容室を発見した。
中に入るとまたその照明は上手い具合に、 ワイヤーを自由に動き、向きも変えられそうだ。
最も入り口に近いところでカットをしている美容師に声をかけるとお待ちくださいと言われた。
けれど、20分経っても、30分経っても、応じてはくれなかった。
美容師は4、5人はいただろうか。
カットが終わったタイミンングで、シャンプーが終わったタイミングで誰かが来てくれても良さそうなものだ。
ようやく全てが終わって会計のため入り口付近にやって来た美容師を、私は呼び止めることができた。
私は、光に当たることができない事情を話して灯りを一箇所ずらしてやってもらうことはできないかと尋ねてみた。
答えははっきり言えばノーだった。
「俺たちみんなそれなりのスタイリストなんですよね。
みんな固定客が結構ついているんでね。」
つまり手一杯で、厄介な客に対応している余力などないと言うのだ。
オーナーに話をさせてもらえないかと尋ねると、
経営者は、場所を貸しているだけだと言う。
察するに、それなりのスタイリストだという美容師がそれぞれ独立した事業主で、そのスタイリストが集まって場所を借りているということなのかもしれない。
最後に突然「申し訳ありません。」と名スタイリストが頭を下げて言った。
その時彼の頭に一体何がよぎったのだろうか。
私にはよくわからない。


なんとも言い表せない、
苦い感じが忘れられないな。

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