飯田商事 |
カフェへの夜道、
身体が冷え切った。
注文する前にトイレに向かうと、
通路の席に、赤の女がいた。
Mサイズのカップには、
まだたっぷりとコーヒーが残っていた。
赤の女は、黒いショートコートを着たままスマホをいじっていた。
そして、いつもの赤鬼さんのように赤いタイツを履いた足が、
開いたままスカートからにょっと出ていた。
髪には、黒い細いリボンがついたカチューシャがかけられていた。
前後のテーブルも既に人が座っていた。
赤を感じるだけの夜か。
甘いミルクコーヒーに顔を寄せていると、
注文カウンターでカフェのプリペイドカードについて
執拗に尋ねている高齢の婦人がいた。
その婦人が納得したのかはわからないけれど、
コーヒーがカップに注がれて、自然と話はおしまいになっていた。
コーヒーが載せられたトレーを手にして歩く婦人は、
確かに、真っ赤なセーターを着ていた。
甘くなった口に
冷たいお水が欲しくなった私は、
席を立って、お水を注いでいる間、
時間が止まってしまった。
気になる赤の女を覗くと、
プリペイドカードについて尋ねていた赤の女が
赤の女と向かいあっているではないか。
赤と赤。
赤の女に連れがいたことはこれまでなかった。
赤の女の友達は、皆赤の女なのか。
向かいあう赤の女の方が年長なのは明らかだ。
今度は用もなしにトイレに行ってみた。
元祖赤の女は向かい合う赤の女を全く無視して、
スマホをいじったままだ。
向かいの赤の女に気遣う様子はまるでない。
元祖赤の女は、目玉オヤジが連なったいつもの大きなパールのネックレスを首からぶら下げていた。
もう一人の赤の女はゴールドの長いネックレスを首から下げて、
耳には砕かれた隕石のようなダイヤモンドのイヤリングが光っていた。
赤の女2号が、話を始めた。
しかし、赤の女はスマホを手放さず、話は聞き流している風だった。
友人、知人だったらもう少し気遣うであろう。
通り過ぎるその瞬間に顔を見比べてみたけれど、
鼻のあたりが、似ているようにも見えた。
赤の女の姉か母親ではないだろうか。
赤の親子か、赤の姉妹ということだ。
今日の東京の最高気温は13度、最低気温は8度、晴れの予報です。
寒い日が続いております。
皆様もミルクコーヒーで温かくなってください。
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