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2015年7月16日木曜日

無口という病気3

Beef in Los

昨年の秋から冬に頻繁に通いっていたのは、ステーキ、ハンバーグ専門の個人経営のお店だ。
そこでコーヒーを飲んだり、時々ケーキを食べたりして、昼間窓を塞いだ部屋の中にじっとているストレスを癒していた。
日の長い春以降は、ラストオーダーが9時なので、ドラキュラがカフェとして通うには、時間的に厳しい。
店内は、ドラキュラにはうってつけのハロゲンライトがところどころ点いているだけで、暗いのだ。
難点は、一つだけ喫煙客がいること。
残業の途中で腹ごしらえをするサラリーマンや、仕事帰りにビール一杯とカットされたステーキを食べて、帰って寝るかという感じのサラリーマン達が来店している。
たまに家族連れもいる。
そこで、コーヒーだけすすっているのは、毎回肩身が狭い思いがしていた。
お肉のいい匂いがぷーんとして、客は皆美味しそうに、ウハウハ息を吐きながら熱いお肉を口に運んでいる。
どのお客も美味しそうにしているものだから、年の瀬に思い切って、お肉の産地を店主に尋ねてみると、国産で、産地はその時によるとのことだった。
年明け早々に、お肉が大好物の良人を率いて、食事を目的に訪ねた。
私が独身だとずっと思っていたという店主は固まってしまった。
良人の口は食べ物を食べるためだけにあって、言葉を発するための口ではなく、また、酷い人見しりであるため、店主の顔すら見ようとしない。
無駄だとは思いながらも、事前に良人には、「いつもお世話になっています。」と言って頂戴ねと言い聞かせてはいた。
 しかし、自宅でのように、良人に替わって、私が良人のセリフを言うしかなかった。
「夫です。」と言った後に、
今度は、すぐさま夫役を務めるのだ。
「いつもお世話になっておりまして、有難うございます。」
「コーヒーだけいただいているようですみませんね。お食事をいただくお店ですのに。」言いながら、良人を見ると私のセリフに合わせて、頭だけぺこぺこ下げてはいた。
後に、誰を連れてきたのだろうと、本当にびっくりして慌ててしまったと言った店主も、ひたすら「はぁ」「はぁ」と頭を下げていた。
勿論良人の口は食べるだけにあるのだから、オーダーもしない。蚊の泣くような声で、私に「コロコロステーキ」と言う。声は、ヘソから出ている。
昨夜も私が、ハキハキと「夫はコロコロステーキセット、私はおろしハンバーグキングサイズとご飯です。」と大きな声でオーダーした。
ハンバーグはふわふわで、予想外の旨さだったものだから、私はいつもハンバーグを食べる。良人によればステーキもとても美味しいらしい。
ヘソが言う。


今日は台風11号到来で、風雨が強くなるようです。
皆様、お気をつけてどうぞ。


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