ビーフインロス |
コロナ禍に、先代から36年続いたハンバーグ屋さんは店じまいとなった。
店内最後の日、最後の客となったのは、私と牛男さんの二人だった。
お店の入り口には、すでに準備中の札がかかり、サンプルにもカバーがかけられていた。
テレビで見るような常連客が店主を囲んで一本締めをする場面もなく、閉店近い時間に入店させてもらうこととなった私たちは、ひたすらガツガツと最後の食事を美味しく食べたのだった。
この数週間 、連日常連客がお昼の早い時間から押し寄せるお店では、家族総出で対応に追われていた。
電車で乗り換えを要するところからお嬢さんが、仕事の帰りにご子息が応援に働き続けていた。
最後の日も店主もご家族も気力だけでもっていると言う感じであったので、少しでも早く平らげてご負担をかけないようにと思ったのだ。
店内最後の日、私は、迷わずキングサイズのおろしハンバーグ、牛男さんはコロコロステーキを食した。
私たちが黙々と食している間、入店が叶わなかったお客に一日だけテイクアウトのお弁当に応じることとなった話が広がって、お弁当のオーダーの確認作業が厨房で行われていた。
最後のお弁当、お客のオーダーはまさに十人十色だ。
ハンバーグ26個、コロコロステーキ25個、カントリーステーキ16、カツカレー2、唐揚げ4と読み上げられざっと100個のオーダーとなるようだった。
ハンバーグは全てキングサイズだと言う。
ちなみに私も最後のお弁当にキングサイズのおろしハンバーグをお願いした。
これが本当に最後と言うお弁当の夜は、当日さらに注文が25も追加されて、ご飯を炊くこと3回となり、まだ私の分まで出来ていないとのことで、出直しとなった。
言いたいお礼の言葉はいっぱいあった。
私が光に当たれず自由に動けないことで、親身に相談にのってもらったり、動いてもらったこともあった。
「心身ともに栄養失調になってしまいます。」が私のおしまいの言葉であった。
それでもまだ店じまいが信じられないような気持ちで、お弁当をぶら下げて帰宅した私は、撮影前にそれをうっかり食してしまった。
大層悔やまれたけれど、あまりの注文の多さにお弁当のパックが不足したのか、いつものお弁当の器ではなかった。付け合わせも無くなったと代わりに唐揚げが 入っていて大食には嬉しい最後のお弁当となりました。ちなみに普段のお弁当はこんな感じでした。
最後のお弁当の夜には、ショーケースの食品サンプルも全て撤収されて、ジグソーパズルのお大きな額も、飾り棚の置物も一掃されて、店じまいの寂しさをひしひしと感じた。
食することが叶わなかったのが、美味しかったチョコレートケーキ。
店じまいの日が迫ってきて、入店した初めの頃に良く食べていたチョコレートケーキをお願いすると、外注のケーキは既にストップしていたのだ。
店主ご夫婦はまだ60代前半とお若いから、近隣でまた開業してくれやしないかと願い続けている。
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