ねっとりと夜

　午前４時に納戸の隙間から微かに入ってくる空気が
お湯のようにぬるかった。
それより前、真っ暗になった７時半過ぎに食事に出ると、
月夜だと言うのに、空気があまりにも重くてねっとりとしていた。
皮膚から滲み出てくるのは、石油ではあるまいかと言う感じの汗だった。
気温は３０度だけれど、湿度は８３％、体感温度は３６度であったらしい。

前の晩も暑くて、空には雲も広がっていたけれど、風が少しあってましだったような気がした。
前の晩は、故郷に帰った。
終電よりは早い電車で帰って来たけれど、夜明けまで、荷物を整理したりして、酷く疲れてしまった。
それで、今夜は、卵で閉じられた鴨の柳川を食べた。
疲れている時に卵で閉じられている物って、すんなり身体に入ってくるような気がする。
合わせて、夏野菜の天ぷらも食べた。
良人は、鴨のロースと揚げなすのお蕎麦を食べていた。
こう言う日にお蕎麦が食べられないのは、本当に悔しい。

良人は夏休みで、前の晩の帰郷について来たので、
疲れて不機嫌だった。
けれど、お蕎麦を食べた時に、
「美味しい、美味しい」とやっと言葉が出た。
故郷もターミナル駅は賑わっていたけれど、
そこからタクシーに乗り込むとあっという間に、
闇夜の景色に変わった。
国道の隣の車線に茶色にラッピングされたバスが走って行くのを見て、私は思わず「どこ行きのバス？」と運転手さんに尋ねた。
するとS団地行きだと言う。
「S団地の住人も高齢者ばかりになったでしょうね。」と続けた私に、運転手さんは、今は外国人が多く住んでいると言う。

蘭免ん

故郷の曇り空には、星を見つけることもできず、
閑散とした辺りが
心にこたえて、気がつくと良人も私も帰りの電車ではずっとうつむいたままだった。

今日の東京の最高気温は３３度、最低気温は２７度、曇り時々雨の予報です。
台風が近づいて、雨も迫ってくるようです。
蒸し暑いので、くれぐれもご自愛ください。