お出かけするほどの元気はなく
いつもの土曜の夜となった。
けれど、久方ぶりに大好物のくずきりを味わうことができた。
居酒屋さんの新しいメニューでは、スィーツが充実したことに気がついたのだった。
私は迷わず、わらび餅とセットになっているくずきりを注文した。
私としては、くずきりだけをお丼いっぱい食べたかったけれどな。
丸い器に涼やかに沈んだ透明なくずきり。
こういう風にくずきりが出されて嬉しかった。
それは、随分と以前に食べて格別に美味しかった東京凮月堂のくずきりと同じ風情だったからだ。
二回り近くも年の離れた職場の先輩に、
くずきりの美味しいお店を教えてもらって行ったのだった。
先輩は、仕事に窮する時は知恵をくれて、独身で食通でもあったので、一人で入ることができる美味しいお店を教えてもくれた。
広尾生まれの広尾育ちだったから東京にも詳しかった。
痩せて、肌の色が透けるように白く、思えばくずきりみたいな男性だった。
オフィスを歩く音さえもしなかった。
ある時、音も風も立てずに、静かに定年退職された。
添えられた黒蜜を静かに
くずきりに注いでいく時、溶けゆきそうなぐらいくずきりを思う。
久方ぶりなんて言う言葉で誤魔化したけれど、
おそらく20年ぶりぐらいだろう。
こんなに好きなくずきりを、どうして長く食べなかったのだろう。
理由は簡単だった。
病気になって入院を繰り返したり、歩けなくなったり、そして光に当たる事ができなくなった。
美味しい甘味処、老舗の甘味処の閉店時間は早くて、
涼が恋しい夏季には、日が長くて到底間に合わないのだ。
冬季にあんみつはあっても、くずきりはないものだ。
居酒屋のこのくずきりは、昔の凮月堂の作りたての葛に比べると、その質感が全く違うけれど、お値段も640円と半額以下だから、、
充分、味わえました。
また食べようと思う。
置地廣場 |
今日の東京の最高気温は35度、最低気温は25度と猛暑の予報です。
山の日だそうで、富士山が並んだ画をお贈りします。
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