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2017年7月6日木曜日

続黒の女



赤の女に会いたい。
そう思って夜のカフェに通い続けている。
けれど、その思いが叶わないことはわかっている。
去年の夏もカフェで赤の女に出会うことはなかった。
時間が合わないのだろうか。
夏の間は、私が9時ギリギリの入店になるから。
台風の後のねっとりと重く湿った空気を分けて入ったカフェに、
いたのは黒の女だった。
女大仏のように、静かに席に座って、正面を見据えていた。
実は、先週も黒の女を見ている。
その時と同じ席、縦に並ぶテーブルの先頭の席に座っていた。
今夏の黒の女は、ショートヘアに黒いベレー帽ではなく、
黒のニット帽を被っている。
暑くはないのだろうか。
黒の毛糸でザクザク編み込まれたニット帽は、
大仏様のパンチパーマのような、螺髪(らほつ)にも見える。
そして、昨夏と同じようなストンとした黒の半袖のワンピースを着ている。










赤の女は、
どこかお愛嬌があって、人間くさい。
けれど、黒の女は無表情だ。
先週は、何かを食べていた。
真っ直ぐに前を向いた顔の口元が規則的に動くだけで、頬は微動だにしていなかった。


黒の女の脇を通り抜けて、
トイレに行った。
その時、黒の女は、クロスワードパズルの本を広げていた。
黒の女が塗り潰した黒と白が目に飛び込んで来た。
そして、パズルの本から目を離した時に、私は再びハッとした。
黒の女のかけている眼鏡の柄が、黒白の牛の模様だったのだ。


ある意味、
赤の女の赤より
黒に徹している黒の女なのかもしれないな。



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