ドラキュラの第三の聖地は、真夜中のスーパーマーケットだ。
コウモリが羽を休めるが如く、
ドラキュラは、真夜中のスーパーマーケットで羽を休めている。
真夜中のスーパーマーケットには、
巨大な空間が広がって、
時に、購入するペットボトルを高く上げたり下ろしたりして、
筋力アップを目指してみる。
時に、腕をぐるぐる回して、泳げないバタフライを装って、
肩の凝りをほぐしてみる。
大股に歩いて、脳の刺激に努めてみたりもしている。
真夜中のスーパーマーケットには、
真夜中に生きる人々の人生模様が映っている。
食材が切れたのか、居酒屋の調理人が割烹着姿で、野菜を掴み取って慌てて出て行く姿がある。
タクシードライバーが用を足すついでに、おにぎりとお茶と缶コーヒーを買う姿がある。
愛想笑いに疲れたキャバクラのお姉ちゃんが、虚ろな目で弁当や惣菜を選んでいる姿がある。
同じ食材を大量買して、仕込みを始めるのかと思われる個人飲食店の女将の姿がある。
ところが最近、
様子が一変した。
静かな真夜中のスーパーマーケットの空気をかき乱す、
輩が出没して、
ドラキュラの目はパチクリしている。
広い空間の人口密度は濃くなって、
シンクロのチーム演技のように、手を大きく上げて回せば、
誰かに当たってしまいそうだ。
そう、巷は夏休みなのだ。
ハットと燕尾服の男性二人だ。
二人は、周囲に配慮するように声を抑えていたけれど、
調味料売り場から、缶詰売り場に移りながらも、
何やら真剣に議論して止まなかった。
ドラキュラだってこのクソ暑い夏に、マントは羽織っていないというのに。
そうかと思えば、
薄いピンクの花が散らばったカチューシャを
ブロンズ色の長い髪にかけて、
絵本に出てくるような可愛い少女もいた。
母親は、引きずるように長いイブニングドレスを着ていた。
空気をうるさくかき乱していたのは、
日本の大学生たちだった。
ありとあらゆる種類のお酒をカゴに投げ入れて、
挙句にレジで、支払いの頭割りでもめ出した。
その列に並んでいた夏の夜の客達が一斉に他のレジに移った。
今日の東京は最高気温32度、最低気温27度、曇り時々晴れの予報です。
今日は、大暑ですから、仕方ないですかね。
なんとか暑さをしのいでまいりましょう。
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