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2017年7月23日日曜日

真夜中のスーパーマーケット



 ドラキュラの第三の聖地は、真夜中のスーパーマーケットだ。
コウモリが羽を休めるが如く、
ドラキュラは、真夜中のスーパーマーケットで羽を休めている。
真夜中のスーパーマーケットには、
巨大な空間が広がって、
時に、購入するペットボトルを高く上げたり下ろしたりして、
筋力アップを目指してみる。
時に、腕をぐるぐる回して、泳げないバタフライを装って、
肩の凝りをほぐしてみる。
大股に歩いて、脳の刺激に努めてみたりもしている。
真夜中のスーパーマーケットには、
真夜中に生きる人々の人生模様が映っている。
食材が切れたのか、居酒屋の調理人が割烹着姿で、野菜を掴み取って慌てて出て行く姿がある。
タクシードライバーが用を足すついでに、おにぎりとお茶と缶コーヒーを買う姿がある。
愛想笑いに疲れたキャバクラのお姉ちゃんが、虚ろな目で弁当や惣菜を選んでいる姿がある。
同じ食材を大量買して、仕込みを始めるのかと思われる個人飲食店の女将の姿がある。


ところが最近、
様子が一変した。
静かな真夜中のスーパーマーケットの空気をかき乱す、
輩が出没して、
ドラキュラの目はパチクリしている。
広い空間の人口密度は濃くなって、
シンクロのチーム演技のように、手を大きく上げて回せば、
誰かに当たってしまいそうだ。
そう、巷は夏休みなのだ。
仰天したのは、
ハットと燕尾服の男性二人だ。
二人は、周囲に配慮するように声を抑えていたけれど、
調味料売り場から、缶詰売り場に移りながらも、
何やら真剣に議論して止まなかった。
ドラキュラだってこのクソ暑い夏に、マントは羽織っていないというのに。
そうかと思えば、
薄いピンクの花が散らばったカチューシャを
ブロンズ色の長い髪にかけて、
絵本に出てくるような可愛い少女もいた。
母親は、引きずるように長いイブニングドレスを着ていた。
空気をうるさくかき乱していたのは、
日本の大学生たちだった。
ありとあらゆる種類のお酒をカゴに投げ入れて、
挙句にレジで、支払いの頭割りでもめ出した。
その列に並んでいた夏の夜の客達が一斉に他のレジに移った。


今日の東京は最高気温32度、最低気温27度、曇り時々晴れの予報です。
今日は、大暑ですから、仕方ないですかね。
なんとか暑さをしのいでまいりましょう。

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