異国から届いたメールには、
「今回の大同窓会は、残念ながら欠席させて頂きます。」と記されていた。
私は、
「垢まみれの人々の集いの中に入るのが嫌なのか?
時間はまだあるから考え直して欲しい。」と記してメールをした。
これに返信はなかった。
さらに、 「私のあの人はこうだった、ああだったという詳細な報告を読むだけで十分だなんて言ってくれるな。」とメールした。
これにも返信はなかった。
それから幾日か過ぎて行くうちに、
私はだんだんと心配になって来た。米国で永年暮らすS子が返信をくれなかったことはこれまでなかったから。
2週間近く過ぎて、遂に「どうしたのか案じている」と3通目のメールを私は送った。
すると届いたのは黄色いかぼちゃの写真だった。
言わずと知れた草間彌生氏の作品だ。
「どういうことなんだ!」と私はちょっとカチンと来た。
現代アートの島、直島の写真だったのだ。
直島は瀬戸内海の島で小豆島の近くにある。
1990年代から、アートによる街づくりを仕掛けたのはベネッセだそうだ。
私は、草間彌生 さんの作品の実物を見たことは勿論ないけれど、
かつてのカレンダーを大事にとってある。
草間さんの作品は、そこそこには元気がないと楽しめないと私は思っていた。
けれど、雨の直島のグレーに煙る中の黄色いかぼちゃは、
心が暗い時でも、ぐっと捕らえてくれる味わいがあって思わず息を呑んだ。
自然とアートの織りなす力なのだろうか。
こちらは、家プロジェクトの一つである「南寺」だ。
特段S子から説明はないので調べたら、
ジェームス・タレルの作品のサイズに合わせて安藤忠雄氏が設計した新築の建物だそうだ。
そもそも家プロジェクトは、点在していた空家を人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら空間そのもをアーティストが作品化したもので、7軒が公開されていると言うことだ。
最後は、道後温泉の写真だった。
つまり、音信不通の間、
カリフォルニアでビジネスパーソンとして働いていたはずのS子は、我が国に「命の洗濯」を しに来ていたと言うことなのか?
ふーん、もはや今年の休暇はなかろう。
それで、大同窓会は残念ながら欠席なわけだな。
垢に塗れる日本へではなく、垢を落としに日本だったのか。
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