目覚めると、
自宅の前に大きな観光バスが止まっていた。
乗客が皆、手招きしている。
乗客をよく見ると、
笑顔に緩む口元から八重歯が出ている。
そして誰もが黒いマントを着て、
ハットを被っている。
「そうだ、ドラキュラ夜の観光ツアーに申し込んだのだ!」
やばい、まだ顔も作っていない。
夜だって、ライトが点いているから日焼け止めを塗らなければならない。
みんなの顔は完璧な白塗りだ。
ガラス越しにもよく見える。
歯磨き粉のようなチューブに入った日焼け止めを、
慌てて、パジャマに垂らしてしまう。
「ああっ」
近頃、見る夢は悪夢ばかり。
誰のお迎えもなく、
真っ暗になった7時に、用事のために家を出た。
ゴールデンな日にしたいがために、
小洒落たところで食事をしたいけれど、
用事が終わる9時に、
小洒落たお店はクローズだ。
夜9時を回っても、
温かく迎えてくれるのはジョナサンだ。
店内はいつもより人が少なかった。
客席稼働率は、五割弱といった感じだった。
フェアメニューの、徳島産阿波尾鶏の地どり丼を食べた。
いい具合に焼かれた長ネギと、
歯ごたえのある阿波尾鶏がマッチしてとても美味しかった。
普段コレルテロールを気にして、
控えたり、
認知症予防に、
突然食べてみたりする温泉卵だ。
ゴールデンな日だから鶏とご飯にかけて堪能した。
日本を代表するスパイスの七味がついてきたけれど、
陳皮がアレルギーなので、
撮影のみに。
隣の席には、30代前半の静かな男性が二人で向かい合っていた。
二人は、フラッフィースノーアイスとチョコレートパフェを食べていた。
私もチョコレートアイスクリームを食べようと考えていた。
けれど、二人の話が、野球から課長風を吹かせる課長の話に変わり、連休明けの健康診断に及んだ。
ちょっと太めの男性の方がお腹周りを気にしていると言い出した時、向かえの離れた席に、新たな客が腰をかけた。
かなりぽちゃりした若い女だった。
私はアイスクリームを断念して退散した。
ジョナサンのお会計のところに、アポロの富士山があった。
外国人観光客には、喜ばれるお土産であろう。
B-R |
さて、ドラキュラ夜の観光ツアーのお土産はどんなものだろう。
星の載ったアイスクリームケーキかな。
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