一昨夜から外は春の嵐だった。
内は、先週末から嵐だった。
嵐の後も生き抜いた八重桜が、
多少残っていた。
桜吹雪は、夜には既に一掃されていたけれど、
まだ風が残っていて、
揺れる八重桜がなかなか上手く撮れなかった。
咲き始めたツツジが落ちていたので、
昼間の風の強さが伺えた。
内の嵐、
爆発したのはあんこではなく、
無口という病気の良人だった。
爆発しても、言葉はない。
なぜなら、良人は無口という病気だから。
良人は、さながら家に近づく人々を威嚇する門前に座る猛犬のような状態になってしまったのだ。
近づくと、
「うーっ」と唸るのだ。
形相もまさに猛犬そのものだった。
「夕飯は、外食か?崎陽軒のお弁当か?それともおうちご飯にするか? 」と尋ねても、
噛み付かれそうだった。
トイレに行く時には、羽根布団を蹴るという暴挙だ。
言葉は全くないけれど、狭い家の空気が一気に重くなった。
無口という病気の良人には、特効薬がある。
それはとびきり美味しい食事だ。
ところが、それが上手く運ばない。
土曜日の晩、良人が大好きなイタリアンのお店に、
買い物をしてから電話をすると既に店じまいだ。
陽が伸びて、ほんの少々の買い物でも7時半を回ってしまうのだ。
その電話の様子を察した良人はますます荒れた。
外も嵐で、私は、カフェで気を紛らわすこともできずに、
上向いて来た体調がまた悪くなりそうだった。
クロネコヤマトに、この猛犬を引き取りに来てもらい、ママのところに送り返してもらいたいと心底思った。
食事の後、猛犬が撮影 |
良人は無口という病気だから、
理由は語らず、
推測するしかない。
一つには、先週の通勤時の度重なる電車の遅延からの疲労だ。
通勤時間が昨年から片道二時間近くになった良人は、乗り換えも多く、各鉄道で遅延が生じると相当な通勤時間になり疲労が募ったに違いない。
もう一つは、私の体調が1ヶ月以上も悪かったことだ。
これによる心労ということではないだろうか。
これには、大いに思い当たる。
先週体調が上向いて来た時に、良人が少しばかり言葉を発した。
「また入院になるかと思った。」
「メール攻撃が毎日になるかと思うと憂鬱だった。」
メール攻撃というのは、過去の長きに及んだ私の入院で、
「パンツ持って来い!」「パンツ取りに来い!」という私が良人に当てたメールのことだ。
これについては、配偶者が健康ならば、背負わなくてもすむ『苦労』であることは間違いないのだ。
そういう意味では、猛犬は逃げ出しもせずに、番兵をしていると言えようか。
昨日も会社を休んだ良人の慰労とご機嫌取りのために、
良人のお気に入りのイタリアンのお店で食事をした。
真っ暗になって、速攻でお店に電話を入れたのだ。
良人はトリッパ、ボッタルガとキャベツのパスタ、イベリコ豚のソテー、ケーキとアイスクリームをぺろりと平らげていた。
私は、前菜盛り合わせとニョッキを食べた。
美味しかったけれど、楽しめなかった。
路地に咲くいろいろな花が慰めてくれた。
地下のスナックからは、
カラオケで昭和の歌謡曲を気持ち良く歌う男性の声が響いて来ました。
以前、メロンについていた日本一というシールを良人の背中に貼って、会社に送り出したことがあります。
猛犬注意というシールを背中に貼った人を今日電車内で見かけたら、それは良人です。
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