丈の高い夏草が、
大波のように風にうねる中、
埋もれるように青い四角いテント。
多摩川河川敷のホームレスの住処を何度見ただろう。
健康だった時の通勤電車の窓から。
「NO」と言ったら、明日はわが身と、
吊革を掴む手に力が入った。
ある時、とうにエアコンが切れた暑い夏の夜のオフィスで、
隣のデスクの元上司が言った。
「あんこさん、私は、多摩川河川敷の青いテントを見る度びに、明日はわが身と思うんだよ。」と。
「ええっ。私もですよ!」と言ったことを今でも思い出す。
先週末の晩、いつもの介護事業者にお世話になって、
遠くに、大荷物を引き取りに行った。
荷物は、畳一畳分近くある段ボール一箱と合宿用バッグ一つ。
荷物の大きさは、悩みの大きさと等しく、
心にずしっと重いものが生まれた。
衣類だけれど、大半は新品の袖を通していないものだ。
ドラキュラは、それらを夜買い歩き、
荷造りするのに2日がかりだった。
年の始めのこと。
甲斐もなく引き取る次第となったのだ。
一枚一枚、広げて、
ドラキュラが着れるかしらとか、
窓ふきにとっておこうかしらとか、
考えながら断捨離しても一向に減らない荷物だ。
トイレ前の廊下にそれらが置いてあるので、
おデブな良人がトイレに入る度、退けるのが面倒になったのか、
ついに無口な口が開いた。
「ホームレスの支援団体に送ったら。」
珍しく断捨離に活路が見出せた。
就眠前の朝、連絡をすると、引き取るとのことだった。
つい最近も多摩川の河川敷で夏草の中、
蚊に悩まされているホームレスの様子が放映されていた。
足しになればいいな。
決着して、やれやれのヴィシソワーズ。
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