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2023年1月18日水曜日

マックにて


 思案の末に指す将棋の駒のように、
呼吸を整えた後に私は肩から腕を上げて静かに10円硬貨を2枚置いた。
硬貨が並んだ銀色のステンレスのトレーは冷たく輝いていた。
 
相対したのは、思いを寄せるなでしこちゃんだった。
なでしこちゃんは、私のその様に気を止めることもなしに、
早口で「ホットコーヒーのエス 有難うございました」と言った。
それがまたとても寂しかった。
もう既に数えきれないぐらい、120円の支払いを受け取っていたのだろう。


 1023年1月16日ホットコーヒーが100円から120円に値上がりするのは、私にとって一大事件だけれど、同じく120円の新聞の一面にもない。
100円コーヒーが一体いつからだったか、思い出すことができないでいる。
調べると、プレミアムコーヒーとなった2008年には100円とあった。しかし、それより以前のコーヒーも100円だった気がしている。
意識することもなしに100円コーヒーは永遠だと思っていた。
全く厳しい世の中になったものだ。

 
流れる雲が描かれたカップに深くため息をついた。
心の雲が流れ行くことはない。
一口を大事に含み、ごくりと飲む。
そんな当たり前のことを、何故かゆっくりと時間をかける。
すると気のせいか、ちょっと味が変わった?
美味しい?
値上がりしたから、そう思いたいのだろうと肩を落とした。
 
飲み干して、ラジオ体操をして、マックを出ようとしたとき、
恨めしくて振り返った。
その時、生まれ変わったプレミアムコーヒーの看板を見つけた。
気のせいではなかったのだ。
ほぼ毎日飲んでいるのだから、違いがわかるのだ。
それが嬉しいやら悲しいやら。
 
諦めたように120円を置いた昨夜も冷たい雨だった。
硬貨を置いて、冷めた目が捉えたのはカフェラテの値段だ。
 
なんとSサイズで190円だ。
カウンターで卒倒しそうになった。これまで150円だったから。

「40円もの値上がり?」お愛想の良いマネージャーだったので言葉にすると、「はい」とマネージャーは目を細めた。

これからはカフェラテは特別な日にしか飲めないな。

冷たい雨に打たれても蕾を膨らませていく路地の蘭ではないからそう強くは生きられませんよ。

今日の東京の最高気温は13度、最低気温は3度、曇り後晴れの予報です。

すっかり気持ちが暗くなりましたので、おしまいに虹色に並んだプリムラの写真をお届けします。


 

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