空色のソーダ水の向こう側、
まだ夏が終わらないというのに
お店がまた一つ街から消えてしまった。
都会の夜は、病人の孤独な心をはぐらかしてくれるように
賑やかだったのに。
オフィスビルの向かいの居酒屋は、7月のおしまいに灯りを消した。確か土曜日は営業していたのにと近づくと、これまでご愛顧いただいてありがとうございましたと、整然と活字が並ぶ張り紙がガラスの引き戸に貼ってあった。
今でも、ふっとまた灯りが灯るのではないだろうかと、提灯がいくつも下がったままだ。
昨夜は、跡形もなく消えた中華食堂のあとを見て、言葉もなく立ちすくんだ。
もうそこに何があったのかわからないのだ。正面の入り口に回ると、つい一昨日に閉店したと張り紙があった。
これまでのお礼の文字はもはや目が追わなかった。
2019年10月28日 |
秋には秋の、冬には冬のメニューが目を楽しませてくれたのに。
一夜にして消えた電子広告は、夜道で狸にまやかされたのだと考えることにしようか。
駅前の立ち食いのうどん屋さんもなくなった。
急ぐように鳴いていた蝉の声もなくなった夜道を戻ると、
郵便受けには、これまでは考えられないような借料となった駐車場のチラシがいく枚も入っていた。
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