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2020年8月22日土曜日

優しい声



 一日、一日、と延ばしてきたことがあった。
8月に入ったら電話しようと決めていたのに。
それは、酷く気が重い電話だった。
そこに別の厄介なトラブルが起きた。
どちらも抱える難病の問題だ。
トラブルの方は、こうするしかないとついに選択肢が狭まって、その後に私は吐いてダウンしてしまったのだ。
電話の方はできずじまいだった。
というより、また気力を振り絞っての電話が身体に障ることはわかっていたので、とりあえず先延ばしにしたのだ。
床に就くと、いくらでも眠った。
けれど、目覚めると電話のことが重い石のように心にのしかかってくる。


ついに今日が限界だという日が来た。
それは、お盆休みのお終いの、先週の金曜日だった。
お願いは、ある手続きのために太陽光を配慮してもらわねばならないのだ。
ただでさえ、厄介なお願いなのに、このコロナ禍でどこも余分な仕事が負担になっているのに違いなく、応じてもらえるかは全くわからない。
言わば、担当者次第だ。
組織として表向きは、ヘルプマークのポスターを貼って、難病の人にも対応するというところでも、いざ組織の中の人は、応じてはくれないものだ。昨年の郵便局でこりごりした。
大方、実務者の長、係長クラスだとお盆には夏休みは取らずに、新人やお偉いさんにお盆シーズンの夏休みを譲って、その後に夏休みを取るものだ。
だとすると、電話のタイミングは、お盆休みの最後の日がリミットとなる。
そして、人は休暇を取る前に優しくなるのではないだろうかと私は考えた。


「どうか心配なさらないでください。できる限りのことはしますから。」
ひととおり話を聞いてくれた担当者は、女性でこれまで生きて来て耳にしたことがないような優しい声で静かに応じてくれた。
もう少し体力がついてからにしようかと金曜日の当日も迷ったけれど、深くため息をついた後にゆっくりとダイヤルを回しのだった。
私は、担当の女性の言葉と声に涙が溢れ出して、気がつくと
「こんな難病になってしまって、すみません。」と言葉がついて出た。
すると電話の向こうで、「そんな、そんな、」と言う。


ちょっと身の上話を聞いくださいな、と言いたくなるような優し声、いいや、優しい人でした。

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