夏休みが終わってしまった。
夏休みと言っても、
ドラキュラである私には、
一泊の温泉旅行すら太陽が許してはくれないのだ。
そんな私が苦し紛れにしたことは、
非日常に努めたことだ。
いつものカフェ、いつものフェミレス、いつものマックに行くことを止めたのだ。
たたそれだけと言えばそれだけだけれど、
これがどうして結構気分が変わった。
そして今夜、久々にマックに行って、
夏休みを惜しむように
ブルーハワイを飲んだ。
ソフトクリームは半分の量にしてもらった。
綺麗なブルーの中に小さな泡が次々に生まれて泳いで行く。
撮影に興じていると、隣の老女が
うろうろと歩きまわり出した。
老女だけれど、栗毛色に染めた長い髪は、
ルノアールに描かれた少女のように小さな波を幾重にも打っていた。
背中を向けて座っていた男女のところに行った老女は
「お友達が急に来れなくなって、買ってしまったアイスコーヒーを良かったら飲んでください。」
男女は老女を見て、身体を仰け反らした。
老女は同じ言葉を繰り返した。
戸惑っている風の男女は、頭をこくんと下げて女が「ありがとうございます。」と言った。
そうでも言わなければ、収まらないと感じたのだろうか。
老女は、嬉しそうに席に戻って来て、
荷物をまとめた。
そして私に、会釈してマックを出て行った。
間も無く、アイスコーヒーを老女から貰った男女もトレーを下げて出て行った。
若いカップルかと思われたその男女は、母親と高校生ぐらいの息子だった。
トレーがなくなった親子のテーブルの端、窓の下には、
紙に包まれたストローが蓋の上にのったアイスコーヒーが置かれていた。
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