医師タケル「悪かった」
ねーちゃん今日子「・・・・」
医師タケル「悪かった」
今日子「ひどい」
医師タケル「許してくれ」
今日子「わーん」と泣く。私は耳がダンボになった。
医師タケル「この前も外出許可出したくなかった。その時から俺が不機嫌だったのはわかっているだろ。」
今日子「わかってた」
医師タケル「行かせたくなかったんだ。でも悪かった」
今日子「お兄ちゃん(タケル)、怖かったんだもん」
医師タケル「ごめん」
勿論、医師タケルはとなりのねーちゃんの兄なんかではない。いつも医師タケルのことをお兄ちゃんと呼んでいるようだ。一体何が始まったんだぁー!昼間のねーちゃんの号泣と関係しているようだが。タケルは確か既婚者で子供もいるはずだ。現実は小説より奇なりだ。私は息を殺した。
ねーちゃんは一向に泣きやまない。タケルはひたすら謝っている。2人は並んでベッドに座っているのか?それとも、ねーちゃんは座り、向かい合うように医師が立って、肩に手を掛けているのか?カーテンの上部50センチ程は、地引き網のようなネットになっている。私がベッドの上で立って編み目の穴から覗けば、2人が見えるはずだ。しかし、そんな体力は全くない。私は唇を噛んだ。『元気だったら、ベッドの上に立てるのに・・・元気だったらこんな場面に遭遇しないかぁ』『ばあさん、こんな時にうんこでナース呼ぶなよ』そんなことを考えていると、医師タケルが我に返ったのか、私が息を殺しすぎたのか医師は「ここではまずい。出よう!」と言って2人は病室を出て行ってしまった。
こんな時は、いびきの一つでもかいた方が良かったのかもしれないと悔やまれた。(登場人物の名前は全て仮称です)
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