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2007年12月23日日曜日

格差社会

 ここは下町にある大学病院。ベッドの左脇、頭の方に背の高い棚が置いてある。それには、いくつかの引き出しと、扉のついた大きめの収納スペース、コインロッカーの大ぐらいの大きさのが付いている。ベッドの右側はカーテン一枚を隔ててとなりの患者の棚だ。
 となりの患者は、引き出しをガタッ、ピィシャッと開け閉めする。私の枕元から隣の棚が数10センチの距離なので頭にがーんと響く。うとうととしていると強烈な一撃をくらったようだ。棚はその都度揺れている。カーテンを引く音もすさまじい。シャッと深夜であろうと、おかまえなしだ。マナーもへったくれもない。室内、廊下はペタッーぺー、ぺたっぺーと草履を鳴らして歩く。
 しかし、それは今のとなりの患者に限ったことではない。どうしたらペターぺーと高い音を立てて歩くことができるのか不思議なくらいだ。『くそー!タップダンスでも習って、次の入院の時は披露してやろうじゃないか』と思ったりする。それは到底無理だから、子供の頃に履いてたピヨピヨ鳴るサンダルで次回は対抗したいと考えている。
 そんなとなりの患者のところに医師が来た。食事の時間だった。むしゃむしゃと食べる音、器をかちゃかちゃ置く音がカーテン越しに聞こえてきていた。が、止まった。
 「お食事中に、申し訳ありません。失礼いたします」とソフトな話し方だ。白鳥貴公子の声だ。「はいょ!」と、となりの患者。静かにカーテンを開けているのは白鳥貴公子に違いない。白鳥先生は30歳にやっと手が届くかというぐらいの、細い男の先生で公家の出か?と言う感じなので、私は白鳥貴公子と名付けていた。
 私は、なんだかおかしくなった。患者は、むしゃむしゃ、ずるずると食事を取る。医師は物腰し和かで、そっと現れて、お食事中失礼いたしますと言う。白鳥貴公子のみならず、この病院の医師は皆スーパーおぼっちゃまだ。大学6年間で優に1億円は超えるという話だ。一方患者はと言えば・・・・・、かく言う私も今は無収入だし。下町の大学病院、それは格差社会の象徴だ。(登場人物の名前は仮名です)
 

 

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