「あんこ」さんの目の腫れが引かないので、牛男が代入力です。
縮まった8時に向かって、私はかかと落としをしていた。
とてもラジオ体操をやる気力もなかった。
階下の植込みに腰を下ろしている人を見るでもなく、吹き抜けの空間を跨いだ先にあるオフィスの灯の灯った窓を数えるでもなく迫る8時に怯えてかかとを上げて落とした。
その私の背中に向かって小さな声か響いて来た。
声の主は振り返るまでもなくかすみ草の君だ。
「8時になりました。店内のご利用は8時で・・・・・」
言葉が終らぬうちに私はコートを羽織った。
まるで試行のようだった9時閉店に多少でも慣れてしまったのか社会規範に至極従順そうな店内のマスク星人達は腰を下ろしたままだった。
かすみ草の君が同じように小声で閉店時間をマスク星人一人一人に伝えて歩く。
マスク星人たちは順々にパソコンの蓋を閉じ静かに身支度を始めた。
「まん延防止措置法」とか言う法律が東京に初めて実施された夜でした。
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