蛍だって群れて飛ぶ。
6月4日のサッカーW杯アジア最終予選対オーストラリア戦は、W杯5大会連続出場のかかった大事な試合だった。なので、大勢で観戦したかった。
これより前のJリーグ20周年記念試合(やはり誤審、Jリーグ20周年記念試合)も1人、テレビ画面に向かい、独り「オフサイド、オフサイド」と叫んでいた。
勝利を分かち合い、喜び合いたいと思ったのだ。
日本代表出場試合の時に大盛況になるビストロが、自宅近くにある。その店では、大画面でサッカーの試合を放映しているのだ。そこに混じろう!とドラキュラは考えた。光線過敏の症状の重いドラキュラは、この初夏の折り、まだ7時には外に出ることはできないが、7時20分には出かけることができるだろう。試合は7時からだ。
先月は、病院待合室で、蛍光灯をよけて座ったのに、顔が痒い。紫外線が入り込む窓のない、ドラキュラには絶好の空間のはずが、どうしてだろう?慌ててお面を顔に当てた。覆いながら考えた。そう、正面上部に医師ごとに受診待ちの患者数が映されている大画面が、設置してあったのだ。お面を手で持ち続けているのも、くたびれる。居場所のないドラキュラは、うろうろと右に左に往復するしかなかった。サッカー観戦のためのビストロで画面を見ずに、うろうろしても意味がない。LEDであって欲しかった。
しかし、女性店主の答えは、蛍光管だった。店のドアにニンニクが吊る下がっているようなものだ。
ドラキュラは肩を落として、店に背を向けて歩きだした。オーストラリア戦もまた独りだ。公園で闇夜に揺れるキョウチクトウを見つけて、夏の空気を吸った。
気を取り直して、ドラキュラのオアシス、真夜中も営業してくれているファミレスに行ってあんみつを食べた。ドラキュラはあんみつが大好きだ。
そして6月4日の対オーストラリア戦は、「ハンド、ハンド」と解説の松木さんと一緒に吠えた。
試合終了の瞬間、「わー」っと大歓声がビストロから聞こえてきた。
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