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2008年10月21日火曜日

6人部屋の情景

 それは一言で言えば地獄絵図なのだけれど、その情景をおさらいしておくと、こんな具合だ。となりは、始終ピーピーうんこだ。最初にとなりだった、はす向かいの患者も相変わらず、この世の臭いとは思えないうんこ以上にうんこな臭いのおしっこを1日4回ベッドの上でする。先人達が爆弾と名付けていたそれだ。談話室に逃げ込まなければいられない。始末にくる看護師は用意周到にマスクと手袋でやってくることもあるが、取るモノもとりあえずやってきてしまった看護師は、かたづけると一目散に逃げるように帰っていく。
 そしてもう1人、向かいのねーちゃん。ねーちゃんは、ふらふら病室を出て行っては、どっかで倒れてストレッチャーで運ばれて帰ってくる。そんな晩は、医師数人と夜勤看護師3人が軍隊の行進のように『ドッ、ドッ、ドッ』と靴音高くやってきて、バイタルチェックを行う。1時間ごとに。
 私は全く眠れない。朝カーテンを閉めたまま、なんとか眠ろうとしていると、張り切り副師長がやってきてシャーッとカーテンを開けてしまう。「あんこさん、どうしたの暗い顔をして!アッサですよー」
『お願いだー寝かせてくれー』と言いたいけれど疲れて声も出ない。
副師長は昨夜の病室全体の様子はわからないのだ。なぜなら、この病棟では口頭での引き継ぎが全くない。看護師に1人1台のノートパソコンが支給されていて、各看護師は、その日の担当の患者のデータを見るという具合だ。しっかり見てるかどうかは確かではないけれど、その日担当する患者のことしかわからないのだ。
 あとの2床だが、1床は脳梗塞か何かの後遺症かと思われる婦人で、話すことも歩くこともできず、いつもベッドからずるっと下がったままじっと悪臭に耐えている。時々看護師に、「自分でベッドの柵を蹴って自分で(ベッドの上の方に)上がって!」と鬼のようなことを言われている。
 もう1床は検査入院の比較的若い患者が2日程度で回転している。皆口々に2日の辛抱と言いつつ鼻をつまみ、その日の検査が終わると外出許可をもらって、お出かけをしてしまう。
 私は、窓の向こうに見える個室病棟を懐かしく思い、切なくなるのだった。

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