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2008年4月18日金曜日
2008年4月16日水曜日
地獄絵図3
夜になって昼メロ「愛の劇場」が始まった。靴音がしてとなりのねーちゃんのベッドのカーテンを閉める音がシャーっと響いた。そして始まった。
医師タケル「悪かった」
ねーちゃん今日子「・・・・」
医師タケル「悪かった」
今日子「ひどい」
医師タケル「許してくれ」
今日子「わーん」と泣く。私は耳がダンボになった。
医師タケル「この前も外出許可出したくなかった。その時から俺が不機嫌だったのはわかっているだろ。」
今日子「わかってた」
医師タケル「行かせたくなかったんだ。でも悪かった」
今日子「お兄ちゃん(タケル)、怖かったんだもん」
医師タケル「ごめん」
勿論、医師タケルはとなりのねーちゃんの兄なんかではない。いつも医師タケルのことをお兄ちゃんと呼んでいるようだ。一体何が始まったんだぁー!昼間のねーちゃんの号泣と関係しているようだが。タケルは確か既婚者で子供もいるはずだ。現実は小説より奇なりだ。私は息を殺した。
ねーちゃんは一向に泣きやまない。タケルはひたすら謝っている。2人は並んでベッドに座っているのか?それとも、ねーちゃんは座り、向かい合うように医師が立って、肩に手を掛けているのか?カーテンの上部50センチ程は、地引き網のようなネットになっている。私がベッドの上で立って編み目の穴から覗けば、2人が見えるはずだ。しかし、そんな体力は全くない。私は唇を噛んだ。『元気だったら、ベッドの上に立てるのに・・・元気だったらこんな場面に遭遇しないかぁ』『ばあさん、こんな時にうんこでナース呼ぶなよ』そんなことを考えていると、医師タケルが我に返ったのか、私が息を殺しすぎたのか医師は「ここではまずい。出よう!」と言って2人は病室を出て行ってしまった。
こんな時は、いびきの一つでもかいた方が良かったのかもしれないと悔やまれた。(登場人物の名前は全て仮称です)
2008年4月14日月曜日
2008年4月12日土曜日
地獄絵図2
うんこ以上にうんこな匂いに再び包まれた私は、身体を起こしてマスクをかけた。すると、向かいの手下のベッドはもぬけの殻で、当然ながらそのとなりのボスもいない。私の左となりのねーちゃんもいない。
『脱走かぁ』と思った。残されたのは、私と、はす向かいの動けないご婦人だけだ。私はトイレまでの歩行ですら危ういのに、それより遠い談話室まで行って余分な体力を消耗させるわけにはいかなかった。トイレに逃げても全く意味がないのだ。
三度事が起きようとしたとき、注視していると、ボスは、私のとなりの患者がナースコールを押すと同時に、10センチほど開く窓を素早く開ける。次にボスは、手下の肩をポンとたたく。手下は何も答えず、直ぐさまスリッパを履く。そして2人は連れだってスタコラサッサと部屋を出て行く。2人が部屋を出るまでの一連の動作は、あうんの呼吸で慣れていた。それより少し遅れてねーちゃんが、サンダルを鳴らして出て行く。
『誰か、だれか私をかついで連れて行ってくれ!だれか、かついでぇーだれかー』私はこころの中で何度もなんども叫ぶのだった。
『脱走かぁ』と思った。残されたのは、私と、はす向かいの動けないご婦人だけだ。私はトイレまでの歩行ですら危ういのに、それより遠い談話室まで行って余分な体力を消耗させるわけにはいかなかった。トイレに逃げても全く意味がないのだ。
三度事が起きようとしたとき、注視していると、ボスは、私のとなりの患者がナースコールを押すと同時に、10センチほど開く窓を素早く開ける。次にボスは、手下の肩をポンとたたく。手下は何も答えず、直ぐさまスリッパを履く。そして2人は連れだってスタコラサッサと部屋を出て行く。2人が部屋を出るまでの一連の動作は、あうんの呼吸で慣れていた。それより少し遅れてねーちゃんが、サンダルを鳴らして出て行く。
『誰か、だれか私をかついで連れて行ってくれ!だれか、かついでぇーだれかー』私はこころの中で何度もなんども叫ぶのだった。
2008年4月5日土曜日
地獄絵図
6人部屋に移った。部屋に入った途端、女の囚人部屋はこんな感じかもと思った。部屋にはボスがいて、その手下がいる。凝視する者、関係ないとばかりに淡々としているねーちゃん。なんとも異様な雰囲気だ。
個室にいて寛解の兆しが見えてくると、ベッドの中で左を向いても、上をむいても、右を向いてもかさむ室料代が気になって落ち着かなくなってきたのだ。6人部屋だと、部屋の外のトイレまで歩くことと、人間関係が病身に吉と出るか凶とでるか不安はあった。
私のベッドは2つのベッドに挟まれた真ん中だ。向かいもベッドが3つ並んでいる。挨拶も早々に、早く横になりたいと思い、荷物はそのままに、カーテンを閉めようとしたが、ボスのいる左斜め前方だけは少し空けておくしかなかった。病室内は皆カーテンを開けていて、親分と手下の間などは全開状態だ。こんな中でぴったりと閉めると、いやみな感じになってしまう。そこには協調性がなくも小心な情けない自分があった。
少し眠りたかった。しかし、環境が許さなかった。程なく左のねーちゃんが号泣し始めたかと思うと、右のおばあさんのところには、話相手がきたのか、おばあさんは耳もつんざけるほどの声で自らの半生を語り始めた。両隣ともベッドは手が届くほどの距離だ。向かいのボスはしゃがれ声で、なにやら手下にしゃべっていて、手下の「ウッヒヒ」「ウッヒヒ」という笑声が聞こえてくる。両隣の騒音で、もはやボスの話はよく聞こえない。まるで人が行き交うダウンタウンの路上で仰向けに倒れている感じだ。おばあさんの語りがぴたっと止むと、今度は、うんこ以上にうんこ臭い匂いがぷーんとしてきたのだった。つづく
2008年4月3日木曜日
ぐーたらナース
見にきた時が取り時とばかりに、まだ3分の1は残っている点滴をむしり取ってしまう看護師。勿論、点滴の落ちる速度を計って終わるころを見計らってきたわけではない。近くの誰かがナースコールを押して、そのついでかなにかに違いない。まだ薬剤が残っていた場合、出直すのが普通だ、というか出直すのが当然のことだ。『また来ますね』とか言って。
水に毛がはえたようなソリタならいざ知らず、保険点数で投与量が限られている、わずか80ミリの、しかも大事な薬剤がたっぷり残っていても容赦なく取ってい行く。その時はさすがに「あっ」と言った。すると看護師は「ない、ないバー」と言って、まだたっぷり残っている小瓶を後ろ手に隠してしまった。『ないないバー』?動じるどころか、たいした珠だ。二次、一次救急程度の病院によくあるタイプの君よ!
水に毛がはえたようなソリタならいざ知らず、保険点数で投与量が限られている、わずか80ミリの、しかも大事な薬剤がたっぷり残っていても容赦なく取ってい行く。その時はさすがに「あっ」と言った。すると看護師は「ない、ないバー」と言って、まだたっぷり残っている小瓶を後ろ手に隠してしまった。『ないないバー』?動じるどころか、たいした珠だ。二次、一次救急程度の病院によくあるタイプの君よ!
2008年4月1日火曜日
となりの患者
朝から深いため息が絶え間ない、となりの患者。10分と空けず次のため息が聞こえてくる。ベッド周りのカーテンは常にぴったりと閉まっているので、ベッドに座ってため息をついているのか、横になったままそうしているのかは、わからない。昼間一時だけため息が聞こえない時がある。どこかにふらっとタバコを吸いに行っているようだ。そんなとなりの患者は、40歳に届くかとどかないかという年格好で憂いのある色白の綺麗なヒト。演歌の歌詞に唱われているヒロインのような、場末のスナックでカウンターのテーブルを拭いてそうなそんなヒトだ。来る日も、くる日もため息は止まらない。
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