となりの患者が、入院してきて3日目に「私どこが悪くて入院したのかわからないんです」と騒ぎだした。『信じられない、もう何日過ぎているんだぁ』と思った。見た目は、20代半ばの明るい普通の奥さんという感じのとなりの患者。いつもベッドにすわりTVを見て声を出して笑っていたり、隣の老婆の下膳をスタスタとやったりして、ずいぶん元気だなぁと感じていた。
主治医はドクターカバごんのようだ。カバごんがやってきたみたいだが「よくなってなすよ〜ん」と言って次の言葉がない。もう消えたようだ。ドクターカバごんは、30歳少しを過ぎている。昨年までは、診察室の椅子にそっくり返るように座り、ふんずり返っていた。いつかそっくり返ったまま、後ろにひっくり返ったらおもしろいなと思っていた。しかし、成長したのか久々のカバごんは、横柄さがなくなり、口調がソフトになっていた。人間は30歳を過ぎても成長するのだなぁと思った。
翌日、たまたまとなりの患者のところにドクターカバごんが来ているところに出くわした。出くわしたといっても、カーテンから顔だけ患者の方に出していて、私は、カバごんの後ろ姿を見たにすぎない。その様は、丁度小学生が学芸会で、カバの着ぐるみを着て開幕前の舞台で幕から顔だけを出し、こっそり会場を覗いちゃったという感じだ。セリフはまた「よくなってますよ〜ん」だけだ。すぐに幕(カーテン)、から顔をひっこめてしまっていた。
となりの患者は、さらに次の日、何がなんだかわからないまま、栄養指導に出かけていった。
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