先週の日曜日、女子会で品川まで行った。行き交う人々が、咳をふりまいて歩いていたので、マスク着用開始を誓った。
06年の入院の終盤戦で親しくなったご婦人とそのお嬢様との会食の運びとなった。初めに、美味しい大きな海老天丼の店を提案されたのだった。しかし、その店は、天使の輪のような蛍光灯が鼻の先までぶら下がっていることがわかりアウトとなった。そして、品川の天ぷらのお店となった。真新しい大きなビルには、品川水族館を想わせるイルミネーションが輝いていた。3人が注文した天ぷら定食の海老は、小指ほどの小さなちいさなものだったけれど美味しかったので、やれやれ。何しろ、私の光線過敏のせいで、時間は夜、お店はハロゲンライトの店となったのだから、美味しくなかったら立つ瀬がない。
魚のイルミネーションを見て、昔むかしの事を思い出した。母が入院していた時、同室に居酒屋のママがいた。居酒屋のママらしく、ママは医師に魚の名前をつけた。戦闘的で、いつも、どしどしと病室に入ってくる、顔が長い医師をカマス、物静かな小柄な医師をメダカ、顔が四角い医師をヒラメと名付けた。カマスもメダカも中堅医師で、メダカは内視鏡で結紮する処置がすこぶる上手いと評判だった。ヒラメは大学を卒業して間もなかった。居酒屋のママの主治医はメダカで、ママがベッドの上で大きなクッキーの缶を抱えてむしゃむしゃと食べているところに、メダカが入って来ると「メダカだ!」と言って缶を布団でかくしていた。シュークリームの時にはどうすることもできず、メダカに見られてしまったが、メダカは、何も言わないで、少しにこりとしていた。シュークリームを差し入れたのは、私だったので、私も一瞬ひやりとした。ヒラメは、新人らしくいつも大人しかったけれど、となりの患者が「先生もS大学出身ですか?」と聞いた時、ヒラメはいつもかけているマスクを外し「いいえ!J大学です」とやや大きな声で答えたのが印象的だった。
それから時がずいぶんと流れて、メダカは開業し、カマスは北部の方の基幹病院のセンター長まで勤め退官したと風の噂で聞いた。今、ヒラメは、医局の中を上手くひらひらと泳いでいるだろうか?
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