ところが、一瞬にして夢は壊れた。午前三時に起こされたのだ。うんこ以上にうんこな激臭で。臭いで起こされるのは生まれて初めてだった。これまでも夜中に何度かあったが、眠ってはいなかった。今回は眠っていただけにいつも以上に悲劇だった。寝ぼけていて、なんだろう?とクンクンと臭いをかいでしまったのである。かがなくてもいい臭いを、かぐ必要のない臭いを。愚か者が、入院中で劣悪な環境下で生きていることがわからなくなっていたのだ。
ベッド脇の10センチほど開く小窓を開けても全く意味はなかった。ほかの患者は眠剤でぐっすり眠っていた。私は、とるものもとりあえず、談話室に歩いた。靴下も膝掛けも持たず、椅子に横になると身体が冷え冷えした。病気が悪くならなければいいなぁと思いながら一時間半しのいだ。
明くる日のお昼近くに、昨年同室だった知人が別部屋に緊急入院してきて、私の部屋に会いにきた。ところが、彼女は鼻に腕を充てたきり離さない。「臭くてこの部屋いられないよー」と一言だけ。爆弾は八時に放たれて、私は消臭したように感じていた。換気扇が設置されているわけでもない、室内はすでに年がら年中臭くなっているのだった。
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